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130.ガイアの勝ちみたい
「いや、器は粘土と一緒で捏ねれば形が変わるんだ」
「難しい」
よく分からない。そもそも粘土って何? 捏ねるのは見たことある。屋台の人が粉と水をぐねぐね混ぜる作業を捏ねるっていうの。だから形が変わるのは分かる。
「明日、玩具の粘土買ってやる」
ぐしゃっと髪を撫でられ、大きく頷いた。玩具の粘土をみれば、ガイアの話が分かるね。僕、いろいろ知らないけど、急いで覚えるよ。
子猫より縦に長い白い動物の前足の付け根をもって、持ち上げてみる。びろーんと後ろ足が真っすぐになった。本当に長細い。この動物なんだろう。
「セティ、この動物なに?」
「イタチかな? 毛皮の柔らかさだとテンも似てるが」
「毛皮の柔らかさを重視して、テンにしたんだ」
ガイアが嬉しそうに教えてくれる。話せる動物がテンなのかな? 毛皮が柔らかくてふかふかで、すごく気持ちいい。
「首に巻いたら気持ちいいぞ。何しろ、襟巻にする動物だからな」
「すごい! 飼ってる人いっぱいいるの?」
首に巻くならいろんな人の家にいるんだね。大切に飼われてるのかも。僕も大切にしたら、首に巻かせてくれるといいな。うふふと笑う僕に、ガイアが「あちゃー」と変な声を出した。複雑そうな顔をしたセティが「お前のせいだぞ」とガイアを小突く。
「まあ、そんな感じだ」
変なセティ、何か隠してるみたい。必要なら後で教えてくれるからいいや。ベッドの足元にある絨毯にお座りして、ガイアを膝に乗せる。トムにするのと同じように、何度も首から後ろ足まで撫でた。トムの毛も柔らかいけど、ガイアの毛もすべすべで気持ちいい。
「いっそ、本当に襟巻にしちまうか」
笑うセティに、ガイアがびくっと揺れた。今の、怖かった? きょとんとしてる僕に、ガイアがしがみ付いた。ぐるっと僕の首や頬に毛皮を押し付けて、唸る。
「僕に何かしたら、イシスが……」
睨むセティに、ガイアが少し間を置いてから言った。
「泣くんだからね」
「くそっ、否定できねえ」
得意げに言い切ったガイアの勝ちみたい。今日はみんなで寝ることになった。でも僕達はこれから本屋さんに行くんだ。トムを連れていけないから、ガイアも待っててくれると嬉しい。そうお願いしたら、トムと一緒にお留守番をしてくれるんだって。よかった。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい。お土産は果物がいいな」
お強請りなんて1000年早いと文句言いながら、セティが僕と手を繋いで部屋に鍵を掛けた。他の人に見つかると、トムもガイアも毛皮取られちゃうみたい。怖いね。柔らかくて気持ちいいから、欲しい人がいっぱいいるのだと聞いた。一緒に暮らせば触らせてくれるのに。
「イシスみたいに考える人ばかりじゃないんだよ」
ふーん。靴の音をさせながら、本屋さんまで歩く。前より僕が大きくなったから、繋いだ手の高さが変わった。歩くのも少し早い気がした。街の中は石が敷いてあるから、歩きやすい。到着した建物は、僕の想像よりずっと大きかった。
「……お父さんがすっぽり入るね」
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