往復はがき

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往復はがき

 千鶴が仕事から帰ると、往復はがきが届いていた。往復はがきなんて滅多に届かないから何事かと思いながら、家に入る。  ヘアゴムできっちりとしていたポニーテールをほどき、淡いピンク色のシュシュでゆるく結び直す。  カバンと往復はがきをソファの上に置くと、台所に行ってフルーツ青汁を作り、ナッツと一緒にリビングに持っていく。 「誰か結婚でもしたかな?」  カバンを床に置きなおすと、ソファに寝転んだ。千鶴は今年で25歳になる。友人や同僚もちらほらと結婚しだした。千鶴も結婚を考える恋人がいる。  うきうきしながらはがきの差出人を見ると、菊野夕子と書かれている。懐かしい名前に、千鶴は目を細めた。 「懐かしいなぁ。ユウちゃん、どうしてるんだろ?」  菊野夕子は中高生時代の友人だ。小太りで風変わりな性格をしていたせいでいじめられていたが、あまりにも変わり者な彼女は、いじめをいじめと受け取っていなかった。少なくとも、千鶴にはそう見えた。  田舎町の学校に通っていた千鶴達は、高校を卒業すると散り散りになった。そのまま地元の大学や会社に行く者、都会や他県へ行く者、海外へ留学した生徒も数名いた。  千鶴はそのまま地元のOLになり、夕子は都会の大学へ進学した。最初の頃は連絡を取り合っていたものの、なかなか会えないせいか、夕子とも不通になってしまった。 「結婚かな?」  そう思って往復はがきをひっくり返すと、予想すらしてなかった妙な言葉が並んでいた。 「生、前葬……? なんだこりゃ」  驚きながらも読んでみると、普通の同窓会はつまらないから、同窓会兼生前葬をやりましょうとのこと。場所は都会の外れにある、彼女の別荘。風変わりな夕子らしい。 「相変わらずっぽいなぁ」  変わりない旧友に苦笑しながら、参加するに丸をつけた。 「にしても、別荘なんてすごいなぁ、ユウちゃんは」  彼女がどんな仕事をしているのか気になり、名前を検索してみると、変わったデザインをウリにした雑貨や洋服店の社長をしているそうだ。都内に3店舗あり、通販サイトもあるらしい。  さっそく通販サイトを見てみると、墓や卒塔婆、棺桶などをモチーフにした雑貨や服がある。夕子らしいと思いながら、千鶴は雑貨をいくつか購入した。
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