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「前と言うのは私がここに来たばかりの頃で、リリーシア様の身分を知らない時の事でしょう?
身分を知ってからは供を連れてと言っているでしょう!
一人で行動して何かあったり、変な噂が立ったらどうするのです?!」
もう幾度となく繰り返し言ってきた言葉である。
「変わり者の私が何をしたって大した噂にならないわよ。大丈夫!」
何が大丈夫なのか分からないがリリーシアはケラケラと笑う。
そして笑いを止め
「…誰かが居たら貴方はその姿を見せてくれないじゃない。
久しぶりに見たわ…」
昼間に見た元気一杯の姿は消え、遠い日を思い出す様な懐かしさを滲ませた瞳で見つめ、エリオットの頬に触れようと手を伸ばす。
すると影はリリーシアの手を拒む様に隠れてしまう。
エリオットはその手から逃れる様にリリーシアから距離を取り、諦めた様に
「…お茶を一杯だけ御馳走になります」
と呟いた。
リリーシアはそれだけでも大満足と言う様にニッコリと微笑んだ…。
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