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人見知り気味で口下手な晶にしては、石森とは初対面とは思えないくらいスムーズに会話が続いていたが、晶には新入生対象の行事が待っている。
「すみません、石森さん。俺、もうすぐガイダンス始まるんで行きますね」
自分でも意外なくらい残念に感じながら、晶は石森にこの場の終わりを告げた。
「お、そうだよな。ゴメンな、引き留めちゃって」
「とんでもない! ホントに助かりました。ありがとうございました」
「たいしたことしてないだろ。薬学部って人数少ないし、講義始まったら学部棟で会えると思うよ。じゃあ、またな」
自転車に跨り片手を上げる石森に改めて礼を言い、走り去る背中を見送って晶は指定された教室に向かって歩き出した。
……漫画やアニメの中だけの絵空事だと思っていた、けれど。
(これが『一目惚れ』ってやつ、なのかな)
そう、きっと。
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