無垢な仔猫の愛し方 side晴久

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あんな気持ちになったのは、初めてだったと思う。 八神家の看板を生まれながらに背負う俺は、人の目を気にして生きてきた。名に恥じぬように、失敗しないようにと。だからこんなわがままを通したのは初めてだったと思う。 里香を親父の前に連れて行ったときは激怒されたが、説得すればなんとかなるだろう。話が通らない人ではない。現に、親父も俺と同じ道を歩いてきているのだから、俺の気持ちは嫌というほどわかるはずだ。 コンコン—— 里香の家に行った翌日。オフィスで仕事をする俺の耳に、ドアを叩く音が届いた。その音を聞いた瞬間、心が躍るような気持ちになった。 時刻は12時半。予定通り来たな。 「どうぞ、入って」 そう言えば、ゆっくりとドアが開く。そして少しの間のあと、オロオロする里香の顔が現れた。
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