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卒業して二回目の年明け、成人式を控えた一月にすずめと再会した。
事務作業で、あまりにも体を動かさない日々が続き、ストレス発散に何かないかと考えた結果、フィットネスクラブに入会した日だった。
早速、ランニングマシーンで走っていると、正面のスタジオ内に見覚えのある女が居た。
その人がすずめだった。
うつ伏せになって、両手で両足を掴むという軟体人間しかできないようなヨガのポーズをとって脱力した後、目が合った。やる気のない彼女はめんどくさそうに体を起こしたかと思うと、ひらひらとおれに向かって手を振った。
おれは頭を軽く下げた。
休憩スペースで、水を飲んでいるとすずめはスタジオから出てきた。
「霧くん」
「……おれの名前、覚えてました?」
「うん。霧襠ひいろ」
「……なぎちゃん、変わらないですね」
「いい意味?」
「はい、いい意味です」
おれが頷くと、すずめは一瞬ちらりと見て
「ふぅん」
と、笑った。
覗いた八重歯が可愛かった。
「じゃあ、また」
「はい、また」
返事をして、更衣室に向かうすずめの背を見送った。髪型は二年前と一緒だった。
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