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「霧くんが今まで受け持った生徒で一番、発音が良かった」
すずめはそう言って、電話の向こうで小さく笑った。
同窓会の日以降、二日に一回の頻度で、電話で話すようになった。
仕事終わりにすずめからの着信があったり、なかったり。おれもかけたり、かけなかったり。メッセージを送り合うこともあるけど、返信はゆるゆるで半日以上空く時もある。盛り上がりなどないが、この温度がおれにはちょうど良かった。
「次の土曜日、休み?」
そう聞かれたのは、連絡を取り始めて一ヶ月ぐらい経っていた。
「あー」
と、仕事のシフトを考えていると、
「Next Saturday holiday?」
と、流暢な英語で問われた。
「イエス」
すぐ答えて、本当か、と焦り、思い出せないシフト表を広げると休みだった。
電話の向こうで、笑い声が聞こえて、それは良かった、じゃあ、つき合って欲しい場所があるの、と続けた。
「良いですよ」
返事をして電話を切ると、もっと声を聞いていたかったことに気付いた。
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