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夕日が沈んでいく中、海の上に一隻の船が浮かんでいた。金属の球体には土星のような円盤がついている。窓を覗けば、2人の乗組員が作業をしていた。
「救難信号を出してだいぶ経過しているはずなのに、なぜ助けに来ない?」
顔の半分を占める目がギョロギョロと動き、無数のタコのような腕は配線を修理している。
「ライトを付けているだけ救難信号だって地球人が分かるわけないっすよ。色々と遅れてるんだから」
「だとしてもだ。一瞬でもライトが見えれば好奇心から調査にし、こちらへ来るんじゃないのか」
質問攻めをしてくる彼にため息をつくと、モニターを弄りアンテナを調整した。
「それじゃ、近くの電波でもジャックして地球人の様子でも見てみましょか」
2人がモニターを眺めると、ニュース番組が放送されている。
『続いてのニュースです。今ビーチで『グリーンフラッシュ』が高確率で見られるということで話題となっております』
そこには夕日が沈む瞬間、緑色の光が一瞬だけ放たれる映像が流れていた。
「あの光、我々が出している救難信号じゃないっすか?」
「やはり地球人は救難信号に気づいているじゃないか。ならなぜこっちへ来ないんだ」
怒りのあまり触手を机に叩き付ける。ニュースを見ていると、今度は女子高生や若者たちが映る。
『地元の女子高生がSNSで拡散したことにより、いわゆる『映えスポット』として人々が押し寄せています』
モニターに映る若者は皆片手にスマートフォンを持ち、ポーズを決めている。その様子に乗組員の口があんぐりと開いた。
「完全に見世物になってるっすね」
「・・・・・・救難信号をやめよう。エネルギーの無駄だ」
「・・・・・・ウッス」
その日以来、緑色の光は見えなくなった。
おわり
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