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 ある日の夕方、港町は静けさに包まれていた。波止場には錆びた船が並び、漁師が退屈そうに後片付けをしている。浜辺も閑散としており、波の音だけが響いた。そのすぐ近くの通りを3人の女子高生が歩いている。 「これ、すごくない?」  一人がスマートフォンの画面を見せてくる。タイトルには『映えスポット』と称し、木々に無数のライトが取り付けられ光り輝いている写真が貼られていた。別の画像では、壁に色とりどりの絵が描かれ、まるで翼のようになっている。 「めっちゃ行きたい。でも、東京か」  一瞬目を輝かせたが、すぐにため息をついた。 「いいよね。行けるところでそういう場所ないかな」 「いや、ここだって映えるところあるじゃん」  そう言って海に向かって写真を撮る。そこには海に沈んでいく夕日が写っていた。 「確かにキレイだけどさ。なんか見慣れたというか特別感がないというか」  3人が夕日を眺めていると、水平線から夕日とは違う緑色の光が見え始める。その光は日が沈むほどに濃さと輝きを増し、海の上にエメラルドが浮かんでいるようだった。 「え、ちょっと、やばくない」  スマートフォンのカメラを起動させると、彼女は謎の光へ向けた。
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