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プロローグ 星降る黎明
どこの世の中も非情である。
非情であるから人間の温かさに触れた時、心が大きく動かされる。
大きな窓辺の縁に腰を掛ける少年もその一人である。
少年が見上げる空はまだ太陽の登り切っていない薄暗い明け方である。
その空にはいくつもの星が流星群の如く降り注ぎ、それは神秘的な情景を映し出している。
「これでやっと目標達成だ…」
今にも消えいりそうな声で小さく呟くと腰を掛ける窓辺で落ち着いた寝息を立て始めた。
その少年を温かい眼差しで見守る影が二つある。
「ほら、イース。夜琉をベッドに運んであげなさいな。ご主人様をあんなとこで寝かすもんじゃないよ」
真っ白なドレスに身を包み、病的に白い肌。ドレスに負けないほど白い髪を腰まで伸ばしたスレンダーな女性は隣に立つ男性に促す。
「わかっておるわい。こんな嬉しそうな顔を見るのは初めてじゃったからの。見とれてしまったのじゃ」
肩ほどまで伸ばした黒い髪をひとつに束ねて、執事のような服装の老人は少年を抱きかかえて、そのまま大きなベッドに寝かせる。
「つい最近までこんな小さかったのに、こんな立派になっちゃって…」
女性は少年の頬を指で微かに触りながら愛おしそうに見つめる。
それは恋愛感情ではなく、もっと大きなものを感じさせる。
そう、それまさに母親の愛情の如く少年を包み込む。
隣で静かに佇む老人も大きな愛の溢れる表情で少年を見守る。
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