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73.
" Reunion 再会 1 "
--ついに家を出た亜佳里--
1年が過ぎても、そして更に時を刻んでも、一向に私の中から
なくならない苦しみで・・あぁ、私はこんなにもこんなにも
自分で思っていた以上に夫のことが好きだったのだと思い知った。
私は疲弊しきっていて、現実と夢うつつの両方の世界を
行ったり来たりするようになってしまい、とにかく取り
除いてしまわないとこの苦しみが憎しみに変わってしまう
のではないかとそれを恐れるようになっていった。
そんな恐れが現実になる前に、私は夫の元を去ったのだった。
--澁澤櫂と日向亜佳里の再会--
フルタイム勤務に戻っていたあかりは、離婚して家を出てから
4ヵ月後10数年振りに懐かしい顔と再会した。
その子は今28才のりっぱな青年になり、もはやその子という
言い方は相応しくないけれど。
当時入院していた時、澁澤櫂は17才だった。
病気が再発して10数年振りに再入院となったそうだ。
ヒョロッとしていた体躯も青年らしくほどよく胸板に
肉がつき、11年の月日を思わせる成長振りであった。
11年前の櫂は高校生活残すところ1年の身の上だった。
親族とは縁薄く早くに父親を亡くし、高校2年の半分を過ぎた頃
母親が何者かに殺され家も焼かれ、その上病気になって
しまったのだ。
抜け殻のようになって入院してきた櫂。
その時看護師になったばかりのあかりが何くれとなく手助けした。
行政になんとか頼れないかと掛け合う為、奔走したのである。
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