1101人が本棚に入れています
本棚に追加
74.
" Reunion 再会 2 "
あかりはすでに結婚しており、お腹の中には子供もいた為
櫂が退院した後も彼のことが気に掛かりながらも自分の生活に
手いっぱいで、繋いでいたつもりの彼の手を離してしまった。
しばらくしてゆとりができ、彼はどうしているだろうか
と思った時には行き先が判らなくなってしまっていた。
ひとりだったあの子の手を離してしまったことをずっと
後悔してきた。
だから病気が再発したとはいえ、再び出会えたことに
感謝したい気持ちで一杯だった。
幸か不幸か、今の私はある意味身軽だ。
あの時、してあげられなかった分も今度こそ、力に
なってあげたいと心から思っている。
この10年間どうやって生き延びてきたのだろう。
聞いてみたい気持ちはあったけれど、少しずつでいい。
櫂が話してくれた時に、姉のような気持ちでじっくりと
これまでひとりで頑張ってきた11年を一緒になぞって
あげられればいい、そう思った。
病院での生活なので自然とそうなってしまうのかもしれない
が、亜香里が朝一番櫂の病室を訪れると、早朝いつも彼は
清々しい顔で、部屋の窓を突き抜けた先に、遥か天高く君臨している
空の青に向かってコンテを動かしている。
最初のコメントを投稿しよう!