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78.
" Reunion 再会 6 "
寂しさはあったものの、男同士の恋愛、いつかこのような
日が来るだろうことはいつも心の片隅にあったので、櫂は
蒼井の大きくて深い懐からパッと飛び出した。
蒼井の幸せを願って。
「この2年独り暮らしで少々寂しくもあったけれどほんとに
人生は山有り、谷有りだと感じた。
再発した病気で入院したら、懐かしい人に会えたのだから」
・・・と櫂くんは私に語った。
「ほんとね、私も櫂くんに又会えてうれしい」
お互いに心に何かを残して行った人なのに二度と会えないと
思ってた。
再びの出会いに、互いが感謝した。
櫂は入院して10日後に手術をした。術後2~3日は非常に
心配しながら様子を見ていたが7日めを境に見た目にも
はっきりと判る位元気を取り戻していった。
『よかった』
体調が快復してから病院内ではあるが、一緒に院内の
廻りを散歩したりランチしたり。
リハピリを兼ねて櫂くんは絵も描くようになった。
術後2週間を過ぎた頃、櫂くんの退院する日程が具体化されたの
だが、喜ぶどころか意気消沈していく櫂くんの様子に私は
びっくりした。
「もうすぐ退院だけど何か心配事でもある?」と聞いてみた。
「もう大人の癖して折角亜香里さんと再会できたのに又
離れ離れになるのかと思うと素直に退院を喜べないんだ」
櫂くんは耳を赤くしながらも正直に自分の胸の内を語って
くれた。
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