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88.修正2023.3.13
-----亜佳里と櫂の軌跡-----Episode4------
結婚後10年め、(たっ、たいへんなことに!)10年目の凹凸。
それはもうすぐそこまで春の気配が届きそうな頃のこと。
職場で昼食を食べていた時に届いた一通のメール。
『奥さん、澁澤君と別れてください。私と澁澤君は真剣に
交際しています。年上で子持ちの奥さんに澁澤君は
似合いません。彼を自由にしてあげて。お願いします』
そのメールを読んだ瞬間、遠い日の封印したはずの
忘れられない日々を思い出していた。
『櫂よ、おまえもかっ・・・』の心境だった。
だけど、疑う前に本人に確かめなくては、そう思った。
午後の仕事を何とかこなし、大急ぎで自宅に向かった。
意を決して部屋に入ると、そこには一生懸命にイラストと
対峙している櫂くんの背中があった。
私の気配に気付いた櫂くんが振り返りいつもの笑顔
で迎えてくれた。
私が黙ったまま佇んでいたら・・・
「どーしたの? なにかあった?」と聞いてくれた。
私は胸の内を抑えて普通の声音で尋ねた。
「これ、今日・・こんなメールが届いたんだけど。
誰だか判る?」
私が見せたスマホを覗き込む櫂くんの一連の様子を
どんな小さなことも見逃さないという思いで見ていた私。
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