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90.
" A Joke ジョーク "
次の日、私は午前中休みを取り、櫂くんに連れられて
櫂くんの本を出版してくれている会社の近くにある喫茶店に
入った。
打ち合わせ通り櫂くんとは別れて入り、少し離れた席に
座った。
すると一人の女性スタッフが櫂くんに親しげに話しかけ
てきた。
櫂くんは彼女に注文もせず、いきなり本題に入った。
「僕の奥さんに変なメールしたよね? どーいうこと?」
「あれっ、澁澤君、もう知ってるの?
奥さんに疑われちゃった?
ちょっとしたジョークだよっ。
ドンマイ・・
澁澤君たちの信頼関係がどれくらいかテストした
っていう感じ?
奥さん家出しちゃったとか?
ふふっ、大丈夫だよ。
そうなったらさ、私が澁澤君の奥さんになったげるから」
最初は面白がっている態の彼女だったが、最後の方は
声が強張ったトーンになっていくのが判った。
「山口、こんなのジョークで済まないよ。
人の家庭に波風立てて、何がそんなに面白いんだ。
こんなメール受け取って僕や妻がどんな気持ちになったか
想像できないなんて。
僕はそんな人とは友達付き合い出来ない。
今後一切、連絡しないで!
僕の方も二度とこの店にも来ないから」
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