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94.
-- 櫂亡き後のふたりの行方 --
櫂くんとの突然の別れの後、少し心情的に落ち着いた頃
瑛が会いに来た。
「戻ってきてはくれないだろうか」
・・・
瑛からこの12年間ずっと私のことが恋しくてたまらなかったと
聞かされた。
未由からも瑛がずっと再婚もせず誰とも付き合わずにいたことを
それとなく聞いていた。
・・それで、私はもう一度自分の気持ちと向き合う為に
瑛と同居することにした。
同居を始めはしたけれど、初っ端からあかりは容赦なく
12年以上前に言えなかった自分の本当の思いを瑛にぶつけた。
・・・
亜香里は冷たく言い放つ。
「あなたは私のことが好きだ大切だと言うけれど、それは
違うと思うの。 錯覚しているのよ。
それかそう思い込もうとしているだけ。
あなたとの結婚生活を思い出すたびに、この12年間ずっと
考え続けてきたわ。
私は本当にあなたのことが好きで好きで、あなたの為ならと
ご両親のお世話も、休日になると飲みに出掛けるあなたの送迎も
家のことも子供のことも、仕事をしながら全力でこなしたわ。
ほんとに多忙な毎日で息つく暇もなくって、自分の時間なんて
なかった。
それでも私はあなたを信頼し好きだったから苦にならなかったし
不満なんてなかった。
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