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95.修正2023.3.11
" Entreaty 懇願 1 "
私は大好きな人に愛されて何て幸せな人生なんだろうってさえ
思ってた。
だけど本当は私なんてあなたの大切なものじゃなかったのよ。
私のことを好きだとか大切だとか、みーーーんなまやかし
だったの。
今ならよく判るのよ、よく見えるの、あなたと私の関係が。
ちっとも大切になんかされてなかったってことがね。
あなたはちょっと気に入った子をくどき落し
『好きだよ、愛してるぅ~~っ』ていう言葉で私に魔法を
かけて、外では風通し良く独身のように振る舞い、家では
至れり尽くせりの・・自分にとって楽な暮らしをしていただけ。
家政婦だった・・とまでは言わないけれど、態のいい
なんとやらだったのかなって今は思ってる」
元夫はじっと息を潜めて私の放つ辛らつな言葉の数々に
聞き入っていた。
そして私の肩を抱きながら「ごめん・・ゴメン・・」と
呟いた。
「俺も君の居なくなったこの家でいろいろなことを
考えさせられた。
君や未由のいないガランとした彩りをなくした部屋で。
いつも飲みに行く時、君はどこにも行かずそして忙しい
のにも係わらず心よく笑顔で送り出してくれて、
『飲むのはほどほどにしてねっ』て体調のことをよく気にかけて
くれていたな、とか。
飲んだ後の迎えも嫌な顔ひとつせず、いつも来てくれた
な、とか」
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