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 グレンの動きが、ぴたりと止まった。  そして意外そうな顔で振り返る。 「せんせい、いいのですか?」 「お前は冷房より、自然の風のほうが好きだろう?」  グレンは小さく頷く。 「ヴェリア星は、あつい星だったので、なんだか、うわーいって気分になります」 「……じゃあ俺も一緒に、うわーいって気分になってみるか」  トリスは冷蔵庫に行き、買い置きしていたアイスキャンディーを二本取り出した。  そして一本をグレンに放る。  上手に受け止めながら、グレンは不思議そうにトリスを見た。 「せんせい、いつもは、おひるごはん前には、おやつを食べちゃだめって、言っています。……でも今日は、いいのですか?」 「ああ。俺も一休みしたい」  トリスとグレンは並んで、ベランダから素足を出した。  眩しいほどの青空に、真っ白な入道雲が出ている。  空と同じ色をしたアイスキャンディは、甘くて冷たい液体になって、喉の奥へと流れてゆく。子供のころ、大好きだった味だ。 「へんへい、歯に……歯に、ひーんってきまふ!」  グレンが目を、ぎゅっと閉じて、足をばたつかせた。アイスキャンディは、もう半分以上減っている。 「急いで、がつがつ噛むからだ」  トリスは笑いながら言った。 「せんせい」 「ん?」  アイスキャンディーを食べ終えたグレンが、上目遣いで見てくる。
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