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「おれ、三時のおやつに、せんせいの好きなものをつくります。せんせいは、まどれいぬが好きですか?」  マドレーヌだけが特別好きというわけではない。  しかしトリスは言った。 「そうだな。……一緒に作り方を調べるか」 「あい!」  グレンは目を細めて笑い、本物のねこのように、トリスの腕に頭を擦りつけた。  今日も暑い一日になりそうである。  しかし気持ちのいい風が吹くので、室内にいると不快感はない。日陰にいれば、きっと高原にいるような気分になるはずだ。  ――今度、ウィンドチャイムでも買ってくるか。  風に吹かれて、綺麗な音を出す楽器を、きっとグレンは喜ぶだろう。  トリスは思わず微笑む。  街の中でも、自然の音と空気が感じられることを、トリスは今日初めて知った。  ――ねこと暮らすのも悪くない。特に、こんな夏の午後は。  いままでにない心地よさを身体中で感じながら、トリスはグレンと並んで、いつまでも空を見つめ続けた。 《終わり》
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