星から来たねこ

１

　しかし犯罪者を決して逃さないユーベルの厳しい目に比べて、いかにもやさしげで、見るからに上流階級の紳士といった様子だ。真ん中で分けている髪を両サイドに、ふわりと流しているところが、育ちの良さをさらに強調している。

　彼がカーン・ペットフード社の社長、ニコラス・カーンである。

　全銀河のペットフードのシェアの三割を占め、惑星一つを買い取って会社の保養地にしているような大会社の社長だ。若くて独身なので女性に迫られることも多く、経済誌の表紙を飾った数と同じぐらい、ゴシップ誌にも登場している。

　そんな有名人がトリスの家にやって来て、ちょうど目の前で茶を飲んでいるのだ。

　トリスは正面から目をそらして、自分の真横を見た。

　親友であり惑星生物学者のシラクサが座っている。トリスより先にニコラスと会っているせいか、いまでも落ち着き払って茶菓子を食べていた。

　隻眼の目も、いたずらっぽく輝き、顎には無精髭が生えている。金色の髪も軽く手櫛でとかしただけのようで、どこを見ても普段と全く同じだ。

　トリスも表向きは平然としていたが、内心落ち着かず、己の赤みがかった長い金髪に、つい何度も手をやってしまう。