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 手元の機器を何度見ても、表示はオールグリーンだった。  暗いカーゴルームの中には、積み荷とおぼしき大小様々の箱があるが、どれも生物兵器どころか、危険物でさえなかったらしい。  トリス・セレネードは憮然としつつ、化学防護服の中にある通信機に向かって言う。 「確かに、ここにヘディラウィルスの反応はない」  通信機越しに「やっぱり」と言い合っている声が聞こえる。  通信相手が、すまなさそうに言う。 『ドクター・セレネード。ここにヘディラウィルスがあるという情報は、やはり間違いだったようです。専門家である先生に、ご足労をおかけして大変申し訳なく思っています』  トリスは、とりあえず穏やかに返答する。 「お気遣いなく。バイオセーフティレベル4のウィルスが、こちらに存在しないこと自体は非常にいいことだと思います」  ――俺が防護服を着る前に判明していれば、もっとよかったんだがな。  本当はそう言いたかったが、トリスは言葉を飲み込む。間違った情報を聞かされて、宇宙港に駆けつけてきた地元警察には責任はないのだ。ここで愚痴を言ってもしょうがない。
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