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宇宙港の三番ドックは、個人所有の宇宙船が入るところだ。普段なら休日のショッピングセンターのように、大小様々な宇宙船が並び、人々でごった返している。
しかし今日はこの小型貨物船一隻しか入港していない。周囲は立ち入り禁止のテープが張り巡らされ、警察と宇宙港関係者ばかりが忙しく連絡を取り合っている。
バイオテロに使われる生物兵器が、この宇宙船に乗っているという裏情報が、アウランティカ管区警察局を通じてもたらされたからだ。
もっとも肝心な情報は、トリスが化学防護服を身につけたあとに間違いだと分かったのだが。
「ドクター・セレネード!」
トリスの姿を見つけるなり、宇宙港の責任者と警察の担当者が駆け寄ってきた。
代わる代わる謝罪の言葉を述べたあと、警察官が困惑した顔で言う。
「例の情報ですが――実は全くの嘘というわけではなかったようです。生物兵器ではなく、貴重で危険な生物が載せられていたことには、違いないようでして……」
「ほう」
危険な生物という言葉に、トリスは興味を持った。
「どういった生物でしょう。ヘディラウィルスではなく、別のウィルスが積まれていたということでしょうか」
警察官が答える前に、後ろから声がした。
「お前の専門分野じゃない。どっちかって言うと、俺の専門分野だな」
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