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 楽しげな声に振り返ると、一人の隻眼の男がいた。  暗めの金髪に無精髭のせいもあって、大胆不敵な宇宙船乗りのように見える。  だが実際は宇宙船乗りではなく、トリスと同じ科学者だ。専門分野は惑星生物学で、銀河でも著名な学者の一人である。 「シラクサ。お前が来るってことは、微生物ではなく、もっと大きな生き物が積んであったのか?」 「そういうことだ」  シラクサ・ロルフは、にやりとする。  宇宙港の責任者は嬉しげに、シラクサのところへ歩み寄った。 「おお、ドクター・ロルフ。お待ちしていました」 「早速ですが、問題のやつはどこです?」  握手をしながらシラクサが訊くと、警察官が言う。 「ご案内します。……正直、我々には管理しかねる物ですので、よろしくお願いします」  シラクサは歩きながら、さもついでのように言う。 「トリス。お前も興味があったら、見に来ないか?」 「何がいるんだ」  トリスの興味の対象は微生物であって、動物ではない。しかし本当の積み荷が何なのかは、気になる。  シラクサは振り返って、にやりとする。 「だ」 「……なんだって?」
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