お客様

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いやいや、まってまって、なに言っちゃってんの? 人に浮気疑惑を掛けておいて、自分がチャッカリ浮気していたって事。 どうする? 正体をばらす? このイタイ姿をばらしちゃう? いや、ここはひとつ冷静に行こう。 「んんっ。奥様と円満に別れたいとおしゃっていましたね。冷静に話し合って譲れる物は全て奥様にお渡しすれば円満に別れられますよ」 「ええっ!全て渡さないとダメなんですか?」 旦那は、がっくりと項垂れた。 「んんっ。奥様には、なんの過失もないのですから、円満に別れるのにはそれしかありません。そうしなければ、とても恐ろしい事になると占いに出ています」 そうよ。 私がこんなに優しくしてあげて、いい奥さんを演じていてあげたんだから 猫かぶりもいいところ。それなのに裏切るなんて。 あるもの全部渡してもらって、相手の女にも慰謝料請求しないとね。 急いで探偵を雇い証拠を押さえてもらって、腕のいい離婚弁護士もお願いしよう。 今の姿をバラしたい衝動に駆られるけれど、そこは我慢、我慢。 今の姿、ふふ。 妖し気な紫のベールをかぶり、目の淵にはクレオパトラのようなアイライン、そして紫の口紅、尖った耳、悪魔の尻尾。 昼と夜の間の時間。 私の本当の正体を知らない方が身の為なのだから、ふふ。 悪魔の尻尾の影が笑った。 【終】
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