10人が本棚に入れています
本棚に追加
亜弥は、
初めて、茉由をlunchに誘った。
亜弥にとって、茉由は営業担当時代の元部下、
亜弥が広報に異動になり、本社へ入ってから、
しばらくして、こんどは、
茉由が本社の営業本部へ異動になって入って
きて、同じ係長になり、で、同僚になった。
いま、亜弥は、自分を変えようとしているし、
自分を気遣ってくれた茉由を心配している。
🌹🌷🌷🌹 🌹 🌹 🌹🌷🌷🌹
亜弥は、賢くて気高く、姿は、柔らかく美し
いラナンキュラスの花のような女性。少し前
までの仕事は、この、不動産会社で、マンシ
ョン販売の営業をしていた。
とても
優秀な亜弥は、チーフになった時に、
上司に目をかけられ、この会社で初となる、
「女性だけのマンションギャラリー」を
任された。
亜弥は、
そこのstaff達を個人のキャリアに関係なく
常に平等に扱い、全ての者に常に敬語で
話し、皆とちょうど良い距離を保ち、そこ
での雑用や清掃も、全て、そこのstaffと
同じように自分も動いていた。
本当に亜弥は優秀な賢い女性、そして、自
分の営業担当としての仕事も、そこでの結
果を出すために、senseの良い営業力にも
優れ、
そこでは、その上司の応援もあり、
期待された成果を出すことができ、
それを本社も認め、
亜弥はステップアップし、
この会社の花形、本社の、
広報担当に抜擢された。
そこでも亜弥は、営業時代の実力を活かし、
新しい仕事にもすぐに馴染み活躍している。
そんな彼女の夫は、
彼女を応援していた上司、
亜弥が本社へ入ってから、
すぐに、
2人は結婚した。
その結婚のタイミングを、亜弥は、
とくには気にしていなかったのだが、
それは、夫によって
そう、考えられた事。
亜弥が、ステップアップし、
本社に入ったので、
2人は、結婚した。
これは、亜弥の知らない、
この上司が決めた、
結婚の条件だった。
亜弥は、
自分の仕事を建前に、
夫が、
社長の様子を探るために、新しく設置
した、社長室前の受付カウンターに座る、
美しい新人の前に立った。
この新人は、亜弥の事も、
その夫の、考え、も、知らない。
… この人は、
私と同じなのね…
こんなに… 素直で…
まだ…新人なのに…
どうして、あの人は、
こんな、事が、できるの…
亜弥は、この会社で
夫が成り上がっていくために
自分を利用した事に気づいた。
…ふっ…、なんで、
気づかなかったんだろ、
あの人…、私のこと、
…だったん、だ…
そして、もう、
亜弥は、ふらつかずに前を向いた。
亜弥は、すっかり、
そんな自分の事で心を痛めてくれた、
同僚のことを心配している。
これは、
言えないけれど気づいてほしい…
自分を心配してくれている同僚に、
自分がずっと思ってきたこと、
同僚のことを考えた亜弥の気持ち…
亜弥は、
姿も心も美しい女性。
🌹🌺🌷🌸🌹 🌺 🌹🌺🌷🌸🌹
ランチタイムに貴女を
誘わなければ良かった
せっかくの食事が
貴女と初めてのランチが
あんな男のせいで
楽しくは、ない、ですね…
ゴメンナサイ
貴女にちゃんと
お話できない
自分が情けない
貴女のこと
貴女が好きだから
可哀想に思う
そんなに、貴女
あの男に甘えたいの
でも、それは、虚しいだけ
だから
貴女に考えてほしいの…
きっと、
貴女はソウなのでしょう…
…☽☀☁🌑☁☾
☽☀☁🌑☁☾…
一緒にいるのは
いつも夜になる前まで
だって
日付が変わるまでに
それぞれ違う処に還るから
ねぇ
夜が来なければ善いのに
ワタシ
家族も大切なの
だからワタシもアナタみたいに
家に還るの
でも
ワタシは…
今日も
独りでベッドに横になっているの
☆★🛏★☆
いまワタシは
アナタに繋がりたい
でもそれは
ダメなんでしょ?
きっと
📱…📳 📲…📴
電話をしても
アナタは気づかないふりをする
📱…📳 📲…📴
アナタは
ベッドに独りなの?
こんなに、いま
甘えたいのはアナタなのに
あ…
布団が冷たい
2人一緒なら暖かいのに
アナタの布団は
きっと、暖かいのよね
アナタの傍に安心して寝ている
その人は寒くはないのね
今日は、本当に寒いのに...
目の前が白くなった
🌞
🕊…
空気がキレイな朝
🕊…
ワタシは
家族と一緒に食事する
家族を
愛してる
それも
ワタシの心にいつもある
独りじゃないから
『 ワタシ...
なれない... 』
💍…📜…🖊
ふっ…
でも
そんなこと
アナタは考えないでしょ...
昼間、それは
夜がくるまでの長い時間
アナタは
ワタシを自分のモノだと
強気な態度でいるけれど
それは
職場ではなくて
🏢🚗 🏢🚗
アナタと一緒に暮らしている人に
云えますか
🏠🥦 🏠🥦
ねぇ…
ワタシは、🤡じゃない
職場で
アナタがいくらワタシを好きだと
皆の前で堂々と云っても、それは
嘘
🐺🐺🐺
🐺🐺🐺
🤡🎪🤡🎪
🤡🎪🤡🎪
これは亜弥の妄想、
同僚を心配して、の、
彼女の優しさ。
☽☀☁🌑☁☾…
…☽☀☁🌑☁☾
貴女、
知らなさすぎる。
貴女は
ご家族の為にも
お身体を大事になさってください。
貴女が、大切にしているものを
グジャグジャにするほど、
あの男なんかに、
価値は、ない、です。
ハヤク…気づいて…
クダサイ…
🌹🌺🌷🌸 🌹🌺🌷🌸
亜弥は、自分を心配してくれている
同僚を心配するが、
この、亜弥の同僚だけじゃない、
新人のあの娘だけでもない、
ほかにも…
賢い亜弥は気づいたけれど、
賢くて、聡明な、仕事がデキる、
営業本部のために自分は出向したと
思っている、彼女は…
まだ、あの男に
利用されている事に気づかない…
この会社の中で、
あの男の、
いつも近くにいて、
この、彼女たちの事も、
他の者よりも分かっているのは
1番ドンクサく、不器用な、
この亜弥の同僚、
彼女たちを、
結び付けられるのは。
この亜弥の同僚は、
あの男が、
彼女たちに、
しようとしていること、
この会社の本社で、
しようとしていること、
それを理解できるか、
それとも、
亜弥と、
彼女たちと一緒になって、
あの男に、逆らい…
いままで、
逆らったことなどなかったのに…
そう、変われるのか、
それに…
あの男が厄介なのは、
あの男が事を起こすと、
その事、だけではなく、
それと共に、
いくつもの事をしてしまう…
他の事へ転嫁できるように、
できてしまう。
だから亜弥の同僚は、
頭の中がグジャグジャに、
なってしまうのだが、
それを、亜弥は、
分かってあがられるのだろうか…
🌹🌺🌷 🌹🌺🌷
それは、
茉由にとっては急な事で、胸が苦しくなる、
それほど、全く願ってはいない事だったし、
自分の行いに、自分の足りなさを感じ、
自分の不器用さを自分で責めた。
🌹「こんにちは!」
🌷「あっ!
お疲れ様でございます!」
この日の昼休憩は、
いつもの、
同期の咲と梨沙と一緒のlunch ではなく、
初めて、亜弥と一緒に食事する。
🌷「ここ、いつも同期と一緒に
利用してるんです」
茉由は、
次の言葉に困り、亜弥にmenuを見せる。
🌹「おすすめはありますか?」
亜弥も、自分で茉由をlunchに誘ったのに、
茉由に気を使って合わせる。
茉由は、亜弥から誘われたとき、短い昼休憩
だし、この辺りはどこも混んでいるからと、
この店に亜弥を誘った。でも、なんだか、
lunch meetingのように、休憩との感じでも
なく、茉由は、緊張する。
🌷「私たちは、いつもサンドウィッチ
ばかりです。短い時間だし…」
🌹「そうですね…」
結局、
亜弥も茉由もサンドウィッチにした。
これで、
やっと、話ができる。
🌷「亜弥さん、ゴメンナサイ、
私、電話した、後にも…、
なんだか…、ドウシテッテ…
分からなくて…」
🌹「大丈夫ですよ、
茉由さんのせいじゃ
ありませんから!」
亜弥は明るく微笑みながら、茉由の方を向き、
茉由の右手を自分の両手で包むように握って
気遣う。茉由は、どうして善いのか分からず、
握られた手に左手を重ねた。
そして、亜弥は、
似合わない、感情をだした。
🌹「私、バカにされるの
嫌なんです」
🌷「バカにされる?
優秀な亜弥さんを?そんなこと、
GMが?ですか?」
短い時間の中で、賢い亜弥は、大変な、大事
な話を、この、茉由にも、分かりやすく話そ
うとするのだが、
茉由は、賢くはないので、
ただ、戸惑い、
ただ、聞き役になる。
🌹「えぇ、茉由さんからの
お電話だけではなく、私、
ミオンさんを視たから、
判ったんです。高井は、
私に、した事と、同じ事を、
きっと、ミオンさんにします」
🌷「ミオンさんに?
GMはきっと?同じ事?
ですか?」
…ミオンさんに…なにを…
茉由は、亜弥が、
ミオンの処に往ったのは知らなかった。
自分の電話で、どうなるのか、
考えられなかった。
🌹「はい…、ミオンさんは、
きっと、
高井に利用されます。
自分の直属の部下でもないのに…
花?また、そんなことまで、
しらじらしく…
彼女を心配しているように近づき、
堂々と!受付カウンターの上に…
毎回毎回、花ことばを含ませた、
花を贈ったり、褒美のように、
外に連れ出したり...」
🌷「......」
…そう、なの…
花?あの、アレンジ花が?
知らなかった…
🌹「あの、アレンジ、
主役のデンファレの花言葉は、
『お似合いのふたり』
『魅惑』『有能』ですよ…」
茉由は、亜弥よりも早く、社長室前に座る、
ミオンの受付カウンターまで往っていたが、
その時にも、すでに、あった、
カウンター上の活き活きとしたピンクデン
ファレを主役にしたアレンジ花が、毎回、
途切れることなく、
(たった独り、そこで頑張るミオンに、
寂しい思いをさせないために、)
高井からミオンに贈られた花だとは、
分からなかった。それ、ぐらいに…
「受付カウンターに飾られている🌸」
それは、なにも不自然さを感じない、
ごくごく、ありがちな、受付の様子だった。
きっと、
言われなければ、それだって、
そんな高井の「仕業」だと、
この会社の、誰も気づかない。
でも…、たしかに…
茉由は、考えてしまう。
亜弥から聴いた、高井のその様子は、
高井が、やりそうな事だった。
以前にも…
亜弥が女性だけのマンションギャラリーで
責任者として頑張っていた時に、
そこで、成果を出した亜弥に対し、高井は、
それは、
もう、まえの、事…
―
高井が創った、
女性だけのマンションギャラリーで、
今、茉由は働いている。
ここに建つ新築マンションは、眺望も良い、
斜面の立地を生かした、メゾネットタイプ。
1.2階の吹き抜けもある、床面積も広いも
ので、各フロアには、共有する通路が無い。
各住戸へは、グランドエントランスから専用
通路で分かれており、プライバシーにも気を
配られている。
ここは、時間に余裕のある、富裕層にターゲ
ットを絞った、高級感のあるマンションで、
限られた者が入るのに相応しい、戸数が抑え
られた物件だった。
ここのマンションギャラリーには、
品のある、亜弥チーフは適材適所。
そんな彼女を抜擢したのは、リーダー、
そう、高井だった。
「亜弥君、おめでとう!」
高井は、とても、良いタイミングで、
チーフに花束を手渡した。それは、
花嫁が手にするブーケのような、
真っ白なレースに包まれ、
爽やかなブルーのリボンで纏められた、
上品なものだった。
高井は、亜弥チーフに寄り添った。
センスの良い、礼服のような
スーツに身を包んでいる二人。
ここは、上品な、こじんまりした
マンションギャラリー、
まるでチャペルの、
結婚式のようだった。
お揃いの接客用、スリーピーススーツ
を着ている茉由たち、女性staffたちは
一列に並び、この2人と向かい合った。
「わぁ~、素敵!」
「本当!」
「亜弥チーフ、美しすぎる!」
「リーダー、素敵です!」
「なんてお似合いなの」
「ずっと、このままでいて下さい」
「リーダー、チーフ、お幸せに!」
皆の賛辞は続く。嬉しそうに、はにかむ
亜弥チーフは、何も悪くない。
高井は、亜弥チーフを、
本当に、愛おしそうに、
皆の前なのに、抱きしめた。
「キャァ~!」
「わぁ~」
「リーダー?」
「亜弥チーフ、お幸せそう~」
「おめでとうございます!」
『パチパチパチパチ…』
…えっ?…
…これはなに?
リーダーは、
なにをしているの?…
茉由だけは知らなかった。
茉由はめまいがした、でも、
ここは職場なのだから、
シッカリしなければならない。
🌷「亜弥チーフ、
おめでとうございます。
心より、お慶び申し上げます。
どうぞ、
お身体にお気をつけて、
これからも、ご活躍を!」
茉由も、
心からお祝いを申し上げた。
ここのマンションギャラリーは、
チーフが代わる。
亜弥チーフは、本社の、広報へ、異動になる。
これからは、会社の顔として、今よりも、
広い場で、きっと、活躍していくことになる。
人に気配りができる、華やかな、才女の亜弥
チーフには相応しい、ステップアップ。
これは、
高井の推薦で決まった、人事だった。
この、亜弥チーフに、誰よりも、目立つ、
ちゃんとした、結果を、出させるために、
「女性だけのマンションギャラリー」との、
特徴を出し、
この、女性らしい、亜弥チーフに、確かに、
鮮やかな脚光が集まる様に、
必ず誰よりも、際立たせるように、高井は
力を使った。それを、本社は、評価した。
本社の人事では、良いことも、悪いことも、
高井が考えた事が、通ってしまう。
このときに、
高井が亜弥に渡した、
花束にはブルーのリボンが、
亜弥に渡した、
ブルーのリボンの💐は、
Something blue、
亜弥は、高井の妻となった。
このマンションギャラリーでは、
高井に従っていたチーフは、
ご褒美を与えられたように、
次のステップに上がっていく。
高井は、
チーフの最後の挨拶の後、
出かける準備をしていた。
支度を終えた高井が「長」の席から離れ、
事務所から出ようとしたとき、
高井は、茉由の後ろ側に廻り、
茉由の耳元で囁いた。
「お前のことを決められるのは、俺だ」
茉由は、高井が、一瞬重なった、
この背中が熱くなる。
高井は、茉由が振り向く間もなく、
事務所から出て行った。
もう、ここにはその姿はない。 ―
…そうなの…
茉由は、考え込む。
🌹「茉由さんは、なぜ、高井が
営業本部長になったのか、
ご存知ですか?」
🌷「あっ…いえ、スミマセン。
私は関西にいたので…、
詳しい事は…」
亜弥は、珍しく?初めて?キツイ目をした。
…関西へ、は…
茉由は「高井について往った」関西なので、
亜弥のその様子に、余計に緊張し、言葉を
選ぶように、ひき気味になる。
🌹「あの時、前GMのこと、
高井が、私に『調べろ!』って、
話を持ってきたんです」
🌷「あの時?
『調べろ』?ですか...」
🔍… 🔎?🔭?👓?
🌹「えぇ…、あのころ、
茉由さんと私が担当した、
高井がこの会社で初めて創った、
『女性だけ』の
マンションギャラリーの存在を、
前GMが、「女性だけ」との事を
特徴にすることが、下品だと、
問題にしたんです」
🌷「下品…」
🌹「えぇ、女性蔑視だと」
🌷「そう...ですか...
知りませんでした」
茉由はゼンゼン知らなかった。
🌹「結局…、高井は、
その責任をとって、
マンションギャラリーは
残したまま、staffは解散になり、
高井は関西へ異動になったんです」
🌷「そうだったんですか、
私は、会社が関西進出の…
人事異動だと思って…、
それでも、ショック、
だったんですケレド、私は、
私で…、あのころいろいろ
あったので…、そこはあまり…
私は自分を変えたくて、GM…と
一緒に関西へ往ったのですが…」
🌹「そうでしたか…」
この時の茉由の事情には、いまは、あまり興
味がないようで、亜弥は頷きながらも、茉由
には聞き返さない。
もし、亜弥が、高井の事を今でも思っている
のなら、
茉由が高井にくっついて、関西へ行った当
時の事も気になるところだろうが、
もう、そんな事も気にならないほど、
すっかり、高井の事は思えないようだ。
茉由は、その様子に、また、
やはり、キョトンとなってしまう…
…🦊🐺🐯
🌹「それで、高井は…、
関西へ往かされると…」
この、高井は、
いろいろな事を考える。
これは、
亜弥が、自分から見た事だが、
それだけではなく、
高井は、
茉由の事も、会社の事も考えて、
このマンションギャラリーを創った。
これは…、
亜弥を、この会社のチーフの中で、
誰よりも目立させ、スポットライ
トを当てて、ステップアップさせ
るため。
それは、亜弥に、
満足する結果を与え、
自分を認めさせ
妻にするため。
それと、
茉由をほかの男から離すため。
ここでは、
策士の高井の目論見通り、
亜弥は、
本社から評価されたことに満足し、
高井を認め、
古巣の現地スタッフ達にも
祝福され、高井の妻になった。
茉由は、
頼れるのは、
高井だけになった。
高井は、いつも、この会社で、
自分の思い通りの事をしている。
けれど、これらは、抜け目なく、
会社の為にもなっている。
この「女性だけ」は、マンション
ギャラリーでも珍しいこと。
良い宣伝にもなる。
それに、高井が創ったここは、
富裕層をターゲットにしている、
新築高級物件を販売する処。
その顧客にも、女性だけの方が、
「上品さ」をアピールできる。
それを、本社も認めた「事」だった。
けれど、これに、
咬みついた男がいた。
「出る杭は打たれる」か、
「個人を出し過ぎた」か、
高井は、目立ち過ぎた。
🏢🏢🏢…
本社の、最上階の次のfloor、
この会社を支えている「営業本部」
この一角に設けられた「雛壇」には、
GMが居る。
ここでの GMの普段の様子は、
広々とした自分の floorで
200人ほどの部下を見渡し、
隅々までに睨みが利か
せることのできる、
見晴らしが
良いように一段高い場所に
配置された、
黒光りのワイドサイズのデスクに
「デン!」と構える。
GM は、
この会社の「営業本部長」
営業の者には GMと呼ばれる男。
高井は急に、GM に呼び出された。
GM は、大きな溜息の後、目をギ
ラギラさせて、不機嫌さを出して
いる。
整えられた髭に隠れていた、分厚
い唇が、かすかにしか動かないが、
確かに、ズッシリくる話し方。
「…なぁ、高井、君は、『女性だ
けのマンションギャラリー』は、
富裕層をターゲットにした、
『上品なマンションギャラリー』
として、造ったそうだが、」
「 その、『女性だけの』などと、
何かを、連想させるのは、見方に
よっては、下品なことでもある。
そうは、思わんか?」
高井は首を傾げる。
「 いえ、しかし、これは、『上』
も認めております」
GM は、さらに睨みを利かせた
目つきに変わる。
高井のクチゴタエも、意味はない。
左掌を自らの顔の前に出し、
「耳障りな」云われた言葉を遮る。
「 いや…、これは、私が知らない
話だった。君から、この、話は、
なかったからなぁ…」
「 これは、わが社では前例のない
ことだから、まずは、私に、話を
持ってくるはずだが、違うのか?」
高井は、ぐうの音も出ない
「 … 」
高井は…に睨まれた…
GM は、涼しい顔で話を続ける。
「 黙ったままか… なぁ、高井?
君は、leaderだ。この会社の営業
部のTOPではない。前例のない『事』
を、君の、一存では決められない
んだが…
そこまで、私に云わせるのか?」
ゆっくりと喋ると、よけいに、
大人は怖い。
この高井が、可愛く思える。
「 いえ、その様なことでは…」
まるで、任侠映画の「仕置」のシ
ーンの様なカンジ。
「 君は少し、自由に動きすぎたよ
うだ。組織には、組織の動き方が
ある。この会社には、
『会社の考えで動く者』が欲しい
だけだ。君は、自分のpositionを
勘違いしたようだな」
GM は、脚を組んだまま、腰かけ
ているワイドサイズのレザーシート
の向きをゆっくりと動かし、
かなり離れた一段低く
なったところに居る、
直立不動の高井に、
「 向きを合わせた 」
「では、高井、私からの話だ。
こんど、わが社も、西にも拠点を
置くことになった。君が、営業部
のTOPになりたければ、
そこに往けば善い」
「 君は、最近結婚したばかりで
すまないが、一人で往くことに
なるかな?」
高井は、目を見開き、下唇を噛み
しめる、
「 承知…」
高井は、GM を甘く見ていたわけ
ではない。けれど、GM は本社か
らあまり離れない、デスクワーク。
高井は、営業部の、現場での
最高責任者だった。
GM は、高井の頑張りを、営業部
の成果として「自分がまとめ」
本社から授かるモノは、自分が授
かるべきものだと考えていた。
だから、自分が席を置く本社で、
自分よりも、高井が評価されては
「 困る」。
―
…🌊🌊🌊
そして、
これには、GM の大学の後輩で、
水球部の後輩の佐藤も絡んでいた。
🌊🌊🌊…
―
高井は、
女性だけのマンションギャラリーに、
茉由を入れただけではなく、
高井が、そこに入る時も、
自分のおつきの者まで、
女性に代えていた。
それでは、
佐藤は、往けない。
だから、男の自分が入れない、
女性だけのマンションギャラリー
を解体させ、
二度と、同じような「事」ができ
ない様に、
茉由を、高井から離す、為に、
佐藤が、仕組んだ事。 ―
🌊🌊🌊
高井は、自分を堕とした、前GMと、
自分に爪を立てた、前GMの鷹狩の鷹の、
GMのおかげで、高井のすぐ下、エリア
マネージャーにまでなった、佐藤の、
「事」を考えた。
🌊🌊🌊…
高井は、関西に居たまま、
いずれ、そうしようと、
すでに、用意しておいた、
パートナーの、
本社の、亜弥を動かす。
…🌹🌹🌹
高井から話を聴かされた、亜弥は、
自分がチーフだった、女性だけのマンション
ギャラリーの存在を否定され、高井が責任を
とらされた今回の、高井の人事異動には、
自分の夫と、自分を否定された、と、感じ、
その事が許せなかった。
そして、それを本社で問題にした、人間が許
せない。その、思いが向けられたのが、GM。
亜弥は才女、女性らしい柔らかさ、品の良さ
を持つ彼女は、同時に、気高さも持つ。
自分が優秀だから、本社広報部へのステップ
アップがあったと信じていたが、
女性、ましてや、「女」とのことを利用して
成り上がったと思われては心外だった。
🌹🌹🌹…
「徹底的に、GMの事を調べる」
亜弥は
広報の仕事をしている。
それは、仕事として、
違う部署にも足を運び、
人から、話を訊きやすく、
これに大いに役に立った。
高井は、
それも分かっている。
そうして、亜弥は、
GMこそが、女性蔑視の張本人
だとの事をつき止めた
🔎🔍 🔎🔍 🔎🔍 🔎🔍
―
「オマエ!
そこで何をしているんだ、
スグにそこから出ろ!
何もしていないだろうな!
オマエは絶対に何もするなよ!
手を出したら、どうなるか
分かっているだろうな!」
「 奈美恵さんの受けた
案件についての話し合い
でして、これが終わらないと、
私は、明日は立て込んで
おりますので、今日中に
段取りをしようかと……」
「イ・チ・イ・チ・
ウ・ル・セ・イ・ナァ、オマエ!
ふざけるな! だったら、
昼間やれ! すぐにそこから出ろ!
六時半を過ぎたら、
ただじゃぁ済ませないぞ!
すぐに戻ってこい!」
奈美恵は、エントランスの自動ドアの
一歩手前で「ピタッ」と立ち止まった。
その自動ドアを出た先の車寄せには、
部長の車がエンジンをかけたまま、
見事に「六時半」に合わせて横づけされてい
たのだ。これでは、そのまま出れば、その先
で待ち構える部長の車に乗ることになってし
まう…
……どうしよう、
さっき電話で云っていた
六時半って、この事
だったんだぁ…… ―
―
「ねぇ、大変!
部長が朝から不機嫌で、
皆に、アタリ散らしてるヨ!」
女子更衣室には、まだ着替え中の人も何人か
が居るのに…
奈美恵は「自分が勝手なことをすれば、他人
が責められ迷惑をかける」とのこと、そんな
理不尽なことも、何度も経験させられインプ
ットされて… ―
―
部長のご機嫌を悪くした奈美恵は、自分のデ
スクに戻ると、他の人の何倍もの仕事が云い
わたされた…
修羅場を目の当たりにしたのだから、沙耶の
金曜日は……
きっと、彼女は、指示された通りに、目立つ
こともなく、静かに、部長が待つ車に乗って
しまう。 ―
GMは、
営業本部の派遣社員、奈美恵と沙耶に対して、
仕事中も、時間外も、セクハラ、パワハラを
繰り返し、
仕事中に、ずっと、つきまとったり、仕事終
わりに無理やり自分の車に乗せようとしたり、
あげく、
思い通りにならないと、ミセシメの様に、
制裁を加える。
そして、その際には、奈美恵だけではなく、
自分に逆らった者には、その人を傷つける様
に、皆の前で罵倒したり、
その途端に、仕事を、
増やしたりもした。
しかも、そのために、
営業本部の何人もの者が強制的に動かされ、
奈美恵に対するGMのハラスメントは、
全員が知っている事で、困惑していた。
これは、
個人に対するものだけではなく、
職場は、
健全でなくてはならないとの事からも、
決して見逃せない事態。
これでは…、
✖✖✖! …❓❓❓
職場のパワーハラスメントは相手の尊厳や
人格を傷 つける許されない行為であるとと
もに、職場環境を悪化させるもの。
2020年(令和2年)6月1日から、 職場に
おけるハラスメント防止対策が強化され、パ
ワーハラスメント防止措置が事業主の義務と
なった。
この「パワーハラスメント」とは、職場にお
いて行われる ① 優越的な関係を背景とした
言動であって、 ② 業務上必要かつ相当な範
囲を超えたものにより、 ③ 労働者の就業環
境が害されるもの、
これに、
全部、前GMの行為はあてはまっていた。
だから、失脚するのは、
当たり前の事なのかもしれないのだが、
でも…
それを、
高井は、亜弥にヤラセタ。
…🌹🌹🌹
亜弥は、
営業本部の者を説得した。
そして、
前GMの悪行を告発した。
これは、そう、高井が、
亜弥を焚きつけたものだった。
そして、その、あとは、
亜弥は、この会社で、
「女性達のために頑張った!」
「営業本部のために頑張った!」
と、本社で、評価された。
会社の者は、
亜弥が自分のため、
夫のために頑張ったとは
思ってはいない。
だから、
亜弥は、
着任したばかりの本社の中で、
良い立場になり、
いまでも、「職場で活き活きと」
活躍している。
…🌹🌹🌹
そして、関西に居た、
当時、
営業のナンバー2だった高井は、
すんなりと、
営業本部長(GM)になった。
高井は、
前GMが悪評だったために、
まるで、「スッキリとさせる」ため、
職場環境も、自分の手で、
自分寄りに替えやすかった。
…🦊🐺🐯
高井は着任早々、
次々に新しい事へ替えていく、
まずは、研修会場、
この、前GMのせいで、
傷ついた、女性たちを、
救うために、そこへ異動させ、
彼女たちを思い、
もう、「過去の事にする」ために、
この大事を、
「知らない」外からの者(茉由)を、
責任者に就かせる。
っと、いった具合に、
-―
茉由を自分の近くに置くために…
とは、この会社の誰も思わない。
…🌷🌷🌷
そして、これは、
亜弥も茉由も知らない事だが、
前GMに可愛がられていた、
GMの鷹狩の鷹だった佐藤には、
🌊🌊🌊…
―
佐藤は、ここ、関西では怖いもの知らずで、
ずっと思いを寄せていた茉由にも、その家
族にも、ちゃんと受け入れられ、
この会社に入ってから頑張ってきた事が、
全て報われたと感じられた関西は、
とても幸せに思う処だったが、
いくら佐藤が強くなっても、高井は、自分
に爪を立てた、佐藤に容赦はしない。
まず、茉由だけを人事異動で関東へ戻し、
自分の監理下に置いた。
そして、残された佐藤は、急に、自分から離
れてしまった茉由の事が気になり、仕事が疎
かになる。
現場の責任者としても、高井寄りのstaffを
纏められずに、いつのまにか、手薄になった
自分の任されていた現場で起きてしまった、
部下が起こした「社外秘書類誤送付」
の責任をとって、
グループ会社へ出向が決まった。
…🌊🌊🌊
たしかに、これらは、全て、
高井の思い通りかもしれない。
けれど、それは、
判りにくい。
高井は、
自分の事をするために、
は、
周りの者の目が、
自分に向かわないように、
他の者に、事、を、起こさせ、
その者も、持ち上げる。
…🦊🐺🐯
『 この時の主演は、
あくまでも、
本社で事を起こした、
正義の、亜弥、と、
悪の、前GM、だった 』
🌹🌹🌹…
… GMは、
亜弥さんを利用したの?…
茉由は、
どこまで理解できたのか…、
亜弥は、やはり、気が収まらないのか、
少し、内々な事も茉由に言い出した。
🌹「私たち、寝室も
別々だったんですよ、
本当の夫婦関係じゃ
なかったのかもしれません」
🌷「そう...
だったんです、か…」
茉由は、
こんな事まで云いだした、
亜弥の決心が堅い事に、
とまどう。
茉由には、
賢い亜弥と、
なんでもできてしまう高井が
お似合いだと思っていたので、
亜弥が云う様に、
亜弥と、新人のひよっ子のミオンが
「同じ」とは思えなかった。
🌹🐓🌹?…🦊?🐺?🐯?…🌺🐤🌺?
茉由から見たら、
°˖✧✨.. ✨✧˖°
亜弥は、完璧な女性で、賢く、聡明で、容姿
も柔らかく美しく、上品で、気高くて…っと、
°˖✧✨… …✨✧˖°
女性を褒める時に使うワードは全部、
亜弥にあてはまるし、
外見だけではなく、内面も素晴らしい人だと
思っている。まさに、
茉由と、正反対の
完璧女子だと思っている。
🌹「高井は、自分、
なんですよ、結局…」
亜弥は、今まで、一度も、高井の事を悪く云
った事がなかった。でも、気持ちが離れてし
まえば・・・なのか、こんな亜弥に、茉由は
驚いた。
🌷「自分?」
茉由は、
言葉を繰り返すことぐらいしかできない。
🌹「えぇ…」
亜弥は、 …🥪☕🥪☕
サンドウィッチをカジッタ。
🌹「高井は、利用しようと
してるんです、ミオンさんを」
亜弥は、なんども、繰り返して、
この言葉を茉由に聞かせる。
🌷「利用?」
でも、
茉由はやはり繰り返すだけになる。
🌹「いまに、
分かります…」
亜弥は、濁したまま、終わらせた。
🌷「それは…」
茉由は、また、
頭の中がグジャグジャになる。
…🍥🍥🍥
🌹「べつに、もう、
どうでも良いですけど、
『 高井さん 』は、
別れてしまえば、ただの、
上司、同僚です」
🌷「でも… 本当に、
それで善いんですか?」
茉由はサッパリ?言い切る亜弥に、やはり、
回転が遅いのか、訊き返してしまう。
🌷「私が、余計な事を
言ったから…、スミマセン」
なにを言って善いのか分からない茉由は、
もう、意味のない、
イマサラな言葉を、再び、呟く。
亜弥は、もう、
終わりにしたいようだった。
🌹「いえ、
おしえていただかなければ、
これからだって、きっと、
バカにされ、利用され続けて
いたでしょうから、
おしえていただいて、
良かったと思っています。
お気になさらないで下さい」
『ガタン!』
亜弥は、もう、茉由に話す事がないのか、
自分の食事を終えると、先に席を立った。
残された茉由は、呆然とする。
🌷「......」
…GMって、
悪い人なの?…
…ミオンさんが
悪いわけでもないし…
前GMは悪い人だったから、
責任をとるのは当然だし…、
…亜弥さんが、活躍している、
いまの広報でのpositionは
GMの、後押しがあったからだし…
…GMって…
そんなに、
いろいろなこと、してたの…
ゼンゼン、知らなかった…
それに、これから、も?…
なにを?しようとしてるの…
…ンッ…?社長?…
…🍥🍥🍥
…でも、でも、そんな事より…
亜弥さんが、大変だもの…
ダメ、こんなこと、は…
そんな事とは、どんな事か…、茉由は、
難しい話は理解できないから、
やはり、亜弥の事が、心配になる。
茉由は仕事に戻って、deskに座っていても、
ずっと、そんな事を考えていた。
何事にも、スンナリと、考えられない、
すぐに頭の中がグジャグジャになる茉由に
は、亜弥の決断の速さは…
🌹🌹🌹 🌹 🌹🌹
亜弥は、
ラナンキュラスの花ように美しく、可憐だが、
仕事に対して、プライド高く、凛としていて
気高い。
高井の応援があって、今のpositionを手に
入れたのかもしれないが、
茉由の様に、人に依存するタイプでもない。
もともと、
営業の仕事では、
自分の力で頑張っていたのだし、
だから、
高井がそれを認めて近づいたのだし、
この本社での、今の仕事では、
高井に庇護されているわけではない。
亜弥は、
高井と別れても、ここで困る事はない。
茉由は、
亜弥よりも3つ上だが、
亜弥の凛とした姿勢、
賢さ、強さ…、
自分にないものを認め、
尊敬している。
でも、悔やまれる。
亜弥は、本当に、このまま、
高井と別れてしまうのだろうか…
スキが無いはずの高井は、なぜ、
亜弥を放っておいたのだろう…
これ、には?… 🍇…
最初のコメントを投稿しよう!