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龍樹はまず、主役然として鎮座しているスポンジケーキを開封する。何も塗られたりデコレーションされたりしてない、ただのスポンジケーキだ。これをデコレーションしていく趣向なんだけど……やっぱ具材多過ぎるだろ。
見ててもしょうがないから、俺は夕飯の仕込みをしとくことにする。
これもさっき買ってきた鶏もも肉。今日は特売で69円。有難い。それを一口大に切り分けて、と。
「玲次、包丁」
「使ってる」
「えー? 先に貸せよ」
龍樹が唇を尖らせて手を差し出す。くそ、弱い。俺はしぶしぶって顔を作りながら、包丁を洗って渡す。
「サンキュ。切るぞー」
包丁を奪われちゃ何も出来ない。見ていると、龍樹は取り出したスポンジケーキの上に手を当て、横にスライスしにかかる。
「そこ、真ん中じゃないぞ」
「1/3。3枚にする」
「三枚おろしか」
「魚じゃないんだから、それやめろよ」
龍樹は慎重に包丁を真横に……真横か? おい、こっちから見ると斜めに上がってってるぞ?
「ちょい、それ斜め」
「黙れって。気が散る」
気が散る以前に斜めだっつーの。どんだけ集中しても水平じゃねぇよ、それ。
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