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水星が太陽に吸収された頃、地球にようやく異変が起こり始めた。地球の自転軸が傾き始めたのだ。
かつて月がまだ空に輝いていた頃(月は木星と土星が接近したとき、地球に別れを告げ、小惑星となった)月は常に地球に同じ面を向けていた。これは『潮汐ロック』と呼ばれる現象で、ふたつの天体の距離が近く、重力の影響が強いと成立する。
今や地球は太陽と接近し、その強い重力の影響を受けていた。地球は北半球に陸地が多い、つまり北半球が南半球より重い。重い北半球が太陽に向くよう自転軸が徐々に傾いていった。
自転軸が傾き始めた頃から、地上では異変が起こった。北半球の気温が上昇し始めたのだ。
北極圏は常に太陽を向き、白夜が続いたが、自転軸が傾くにつれ、その範囲は広がった。太陽の放出する熱エネルギーが少なくなっていたものの、北半球の高緯度地帯は太陽が沈むことはない。北極海の氷は溶け、干上がった。
もともと温帯であった地域は亜熱帯となり、巨大な台風が次々に発生し、先進国の都市を破壊した。
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