ハゲを拾った男

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「そ、そうですね、ハハハ……。あの、これってどうしたら良いんですか? 正直くたくたで、すぐ家に帰りたいんですけど……」 「ああ、すまんがハゲを拾った人には書類に名前と住所、それにいくつかの質問事項について記入頂く決まりでね。ちょっとそこに座って貰えるかな」  警官は申しわけ無さそうな顔で伝えながら、机の引き出しの中から書類を取り出した。 「あっ、そうですか……そんな長くはかからないですよね?」  男は、机を挟んで警官と向かい合う形で椅子に腰を下ろした。   「うーん、どうかなぁ。素直に答えてくれればねぇ」 「……えっ? どういう意味ですか?」 「いやね、ハゲを拾ったと言いつつ、実はハゲを盗んだ犯人だったというケースもあるからねぇ」 「…………!?」  驚きのあまり言葉を失う男。  それもそのはず。  好き好んでハゲを盗む人間なんてこの世に居るわけがない。  いや、万が一そんな人間が存在してたとしても、せっかく盗んだハゲを交番に届けるだろうか?  と言うかそもそも、このハゲの落とし主の頭は一体どんな状態になってるんだろうか……。  様々な思いを頭の中で巡らせながら、男はとりあえず警官に渡された書類に住所や名前など必要事項を書き込んでいった。  が、妙な視線を感じて顔を上げると、そこには男の頭のあたりをマジマジと見つける警官の顔。
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