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「えっ、なんですか!?」
「あっ、気にしないで。ハゲ確してただけだから」
「ハゲカク?? って、なんですか?」
「ハゲ確認、略してハゲ確ね。さっきも触れたが、この世には他人の頭からハゲを盗む不届き者が居るからねぇ……あっ、お兄さんは大丈夫そうだね。フサフサだし」
「そんなことが……って、大丈夫なのは今だけですよ」
深いため息をつく男に対し、警官が「おや、それはどういうことだい?」と問いかける。
男は、自分の父親がこのM字ハゲにそっくりなM字ハゲだった件を話した。
「なるほどね。ハゲは遺伝すると言うから、それを恐れてるってわけか。まあ私は一介の警官に過ぎず、専門的な知識があるわけじゃないから何とも言えないが、そう悲観する必要は無いと思うよ」
「えっ? なぜ……?」
男は書類に走らせていたペンを止めた。
「キミのお父さん、そのハゲとそっくりなハゲだったと言ったね」
「はい、そうですけど……」
「だとしたら、それはとても羨ましいことだ」
男は一瞬、警官の言ってることがよく分からずに思考が停止してしまった。
父親を含めたハゲの人たちには申しわけないが、ハゲで羨ましがられるなんてことあるわけが──。
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