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「ほら、私なんてこの有様だからね」
警官は自ら被っている帽子を取り、少しうつむくようにして露わになった頭を男の方に向けた。
「あ……」
思わず言葉を失ってしまう男。
警官の帽子の中身は、お世辞にも“良いハゲ”とは言いがたい、非常にとっちらかったタイプのハゲ頭だったのだ。
「ねっ。羨ましいと言った言葉の意味、分かってくれたかな?」
「ま、まあ……」
「おっと、すまんすまん! 気を使わせちゃったね」
警官は帽子を被りながら矢継ぎ早に続けた。
「ここだけの話、カツラという選択肢を考えたこともあるんだけどね、ギリギリの所で踏みとどまったんだよ。なぜだか分かるかい?」
「い、いや……ちょっとわかりません……」
「市民の安全を脅かしておきながら嘘をついて罪を隠そうとする犯人に対し、嘘を見抜いて真実を明るみにするのが務めの警官が、カツラという名の嘘をついてちゃダメだろ……ってね」
ベテラン警官は、言ってやったとばかりにキメ顔を決めた。
……が、いまいちピンと来てない男の様子を見てさらに続けた。
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