0人が本棚に入れています
本棚に追加
「まず、警官である私が真実の頭を明るみにしなくてどうするってね。嘘の毛はいかん。嘘の毛いかん。嘘の警官……なんちゃって」
「……プッ! ぷはははは! ちょ、ちょっと何言ってるんですかもう!」
警官の口から飛び出したオヤジギャグがあまりにもくだらなすぎて、男は思わず吹きだしてしまった。
そして、そう言えば自分の父親は自らのハゲを自虐した事は1度もなく、常に堂々としてたっけ……なんてことを思い出していた。
「こりゃ失礼。話を逸らしてしまって申しわけない」
「いや、全然……って、そういえば、このM字ハゲの落とし主がいつまで経っても現れなかったらどうなるんですか? 処分されるかとか……」
「そんなもったいない! 私がこっそり貰うことになるだろうね」
「えっ? マジですか!?」
「…………」
「ほ、本当なんですか?」
「…………失礼。今のは嘘だよ。貰いたい気持ちは山々だがね」
「も、もう! 勘弁してくださいよ! っていうか、あんなに偉そうなこと言っておきながら、市民に対して平気で嘘付くとかダメでしょ!」
「ハハハ、こりゃ一本取られたな。おっと、私の髪の毛は一本取られたどころの騒ぎじゃなかった」
「プッ……って、これじゃいつまでも帰れませんよ! もう、いい加減ちゃちゃっと書いて終わらせるんで!」
男は楽しそうに笑いながら、簡単な質問事項に答えを書き記していく。
……しかし、書類の最後に記載されていた確認事項を見た瞬間、ペンの動きがピタッと止まった。
最初のコメントを投稿しよう!