おとす、おとす。

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 ***  携帯の電話番号は、あの亡くなったお巡りさんに教えたのみである。それを使って、警察の人も連絡を入れてくれたはずだった。それなのに、その番号を変えろとは一体どういうことなのだろう。まさか警察から、番号が流出した可能性があるとでも言うのだろうか。  私が真実の一端を知ったのは、同じ事件に関わるニュースを、ネットの方で再度確認してからのことだった。どこから情報が流れたのか、女性が亡くなった状況がもっと詳しく記されているニュース記事があったのである。  彼女は、それこそ口裂け女のように――口を耳まで切り裂かれ、顎を外され、舌を持ち去られて死んでいた。それによる大量出血とショックが死亡原因であったというのだ。  しかも、彼女が行方不明になったのは交代の直後。あんなかさばる白いワンピースなど持っていたとは思えない、犯人が着せた可能性が高いというのだ。一体何故、誰が何のためにそのようなことを。  ネットニュースのコメントで、こんな書き込みをしていた人間がいたのが忘れられない。 『遺体を見てしまった人は気の毒だな。俺、霊感あるからわかるぜ。これは続く。見た人に“感染”する呪いの類なんだ』  きっと面白半分の人間が、適当にそんなことを言っただけなのだろう。人間の犯人より幽霊の方がいいのかどうかは知らないが。  どちらにせよ、恐ろしいことには違いない。  なんせ交番に行ったその日の夕方。携帯電話の留守電に、公衆電話からの留守番電話が入っていたのだから。  その、男とも女ともつかない声は、たった一言こう言って電話を切っていた。 『おまえ、みたか?』  私はそのすぐ後、言われた通り携帯の電話番号を変えた。果たして私に電話をかけてきたのは、人間だったのかそれ以外のナニカであったのか。  幸い、それ以降おかしなメッセージが残っているということはない。――少なくとも、携帯の留守番電話には。
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