神様のパパ

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神様のパパ

 体育を終えて教室に帰ってきたら、私が元々着ていた服が無くなっていた。  どうしよう、どこに行ったんだろうと探していたら、遠くで私を見てほくそ笑む桜子ちゃん達に気づいた。  あぁやっぱりまた、桜子ちゃんのイタズラなんだ。  私の服は女子トイレの一番奥の個室で見つかった。体操着袋に入ったまま便器に突っ込まれて、その上から誰かがうんちまでしてくれていた。体操着袋は水でジャバジャバ洗ってビニール袋に入れたけど、ビニール越しにでもうんちの匂いが漂って来るような感じがした。  お陰で私はその日の残りの時間を、一人だけ体操着のまま過ごした。   学校は嫌いだった。  毎日嫌なことばかりだけど、その日は特に最悪の日だった。  うんちが付いた体操着袋が入ったビニール袋をぶら下げながら帰る足取りは、どうしようもなく重かった。ママはいつも仕事とパパの面倒を見るので忙しいから、こんなことを知ったら絶対怒られる。  学校は嫌だけど、家にも帰りたくない。桜子ちゃんが「汚くて貧乏たらしい」と言う私が住む団地は、いつもドブみたいな匂いがしてる。うちだけじゃなくて、色んなところから怒鳴り声や悲鳴が聞こえてくる。どこを見ても暗くて、くすんだお化け屋敷みたいな団地だ。  どこに行っても、嫌なことばかり。  私は、ふと通学路の途中にある赤い鳥居に目を留めた。  そうだ、神様にお願いしてみよう。
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