神様のパパ

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   ※     ※     ※  帰ってきたママは、運動着姿の私と洗濯機に入れられたずぶ濡れの服を見て、予想通り理由も聞かず怒った。 「なんで変なことばかりするの? ちゃんとしなさいよ、もう!」  ちゃんとしなさい、はママの口癖。私にはちゃんとの意味がよくわからない。ちゃんとってなんだろう? 桜子ちゃんみたいにお金持ちの家に生まれてオシャレな服を来て、弱いものイジメをするようなのがちゃんとする事なのかな?  桜子ちゃんが言うには、私の家みたいに団地に住んでいるのは普通じゃないらしい。あんな汚くて臭い所、と桜子ちゃんは言う。私たちは普通じゃないところに住んでるのに、ちゃんとすることはできるのかな? の違いっていったいなんなんだろう。  ママは昼間は仕事しているのに、帰ってからも洗濯に料理にと忙しい。夜になればいつパパがやって来るかわからない。パパは一緒に住んでいるわけじゃないけれど、毎日のように突然やって来る。パパが来たら、その瞬間からママは何もできなくなる。ずっとパパの隣で言うことを聞いてないとパパは不機嫌になって怒り出すから、そばを離れられないんだ。  コップが空になったらビールを注いであげなくちゃいけないし、ビールの缶が空になったら焼酎を作ってあげなくちゃいけない。しょっぱい物とか油っこい物とか甘い物とか、パパが食べたいと言ったらすぐに作ってあげなくちゃいけない。おっぱいを触られたり、お尻を撫でられたりしてもママは黙って我慢している。  でもお金を寄越せとパパが言った時だけはママは拒否する。そうするとパパは怒って暴れ出すから、結局ママは泣きながらお金を渡すようになる。
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