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「神様、ありがとう」
神社に行くと、お社の中から神様が出てきた。改めて見ても、ぼさぼさの頭と髭は、桜子ちゃんを乱暴したというフシンシャの特徴と一緒だ。
やっぱり神様がやってくれたんだ。私は嬉しくなって、笑顔を浮かべた。
「どうだい? 嫌な子、懲らしめられただろ?」
「うん、しばらく学校来ないって」
「そうだろうな。もしかしたら、もう二度と来ないかもしれないぞ」
「良かった。神様ありがとう」
私は満面の笑みで、袋を差し出した。
「なんだこれ?」
「くもつ。お願いする時は、くもつが欲しいって言ってたでしょう? だから」
わざわざ一度家に帰り、私がこっそり貯めた小遣いで買ってきた駄菓子の詰め合わせだ。二百円分ぐらいあるから、きっと一日で食べきったら虫歯になるぐらいの量がある。
これだけあれば、神様はきっとまた別のお願いも聞いてくれるはずだと思った。
「ふぅん……まぁ、ありがたくいただいておくか。それで別のお願いってのは、何だ?」
「パパをやっつけて欲しいの」
「パパを? お前の父ちゃんか?」
「ううん、お父さんはずっと昔に家を出て行ったから、パパは違う人。ママの新しいカレシだけど、パパって呼ぶように言われてるの。でも、お酒を飲むとすぐ暴れるし、嫌な事ばかりするからいなくなって欲しくて」
「そいつは厄介なやつだな。どうせ金もよこせって騒ぐんだろ?」
「そう。どうしてわかるの?」
心を見透かされたみたいで私は目を丸くした。
「俺は神様だからな。なんでもお見通しよ」
神様はニヤリと得意そうに笑った。すごい。やっぱり神様はなんでもわかるんだ。
「そういう事だと、パパはあんまり金は持ってないんだな」
「うん。でも、昨日はパチンコに勝ったって喜んでたから今はいっぱいお金持ってるかも。ニジュウマン、ニジュウマンってママに自慢してた」
「はぁん、ニジュウマンか……」
神様の目がキラリと光ったような気がした。
「やってくれるの?」
「おう、ちょっと考えてみるよ。でも本当にいいんだな?」
「うん。ママも毎日泣いてるもの。神様お願い。パパをやっつけて」
「ああ、わかった」
神様はにかっとほほ笑んだ。
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