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「最近ご機嫌だねブリアナ。何か良いことでもあったのかい?」
「うふふ、レンツさんにもわかる?そうなの、最近私、とっても楽しいのよ!」
魔女・アーリーンと出会ってから、私の毎日はキラキラと輝き出したのだった。学校で“本ばかり読んでいる根暗”とからかわれようと、お稽古をサボったと義母に叱られようとも関係ない。学校の帰り、本屋に寄って、それからアーリーンの家に向かう。そしてアーリーンと、空想の世界の話をしながらお茶菓子を食べるのが毎日の日課になっていた。
最近はちょっとお菓子を食べ過ぎて晩御飯が入らなくなり、父に苦い顔をされることもあるけれどそれはそれ、である。
「今日は、チョコレートケーキを焼いてみたの。ブリアナ、チョコレートが大好きでしょう?」
「わあ!さっすがアーリーン、料理上手!」
アーリーンの入れてくれる紅茶とお菓子はどれも絶品だった。今日のご馳走は、大きなチョコレートケーキである。彼女は毎日、私のためだけにお菓子を焼いたりご馳走を振舞ったりしてくれるのだ。しかも、その量がまたすごい。親戚の子達と一緒に出席するパーティや学校行事なら、“他の子の分がなくなるからダメ!”と言われてしまうようなお菓子の類も。全部まるごと、ブリアナ一人で食べていいと言ってくれるのだ。
ケーキをワンホール一人で独占する。小さな頃の小さな夢が、ここに来て叶った形だ。しかも、木苺がまんべんなく飾り付けられた一品である。私はにこにこと微笑むアーリーンの目の前で、贅沢に切り分けもせずにケーキを頬張るのだった。今の私にとって、一番幸せな時間である。
「ねえねえ、アーリーン。今日はなんのお話をしてくれるの?」
ケーキを食べながらおねだりするのは、アーリーンが知っているという遠い遠い異世界の不思議な物語である。それらはたくさんの本を読んできた私にも全く知らない、聞いたことのないものばかりだった。私のもう一つの楽しみがそれである。
彼女が本当に魔女であるのか、残念ながら私にはまだはっきりとはわかっていない。私の目の前で彼女がわかりやすく、それこそお皿を浮かせて見せるとか箒で空を飛ぶなんてことをしたわけではなかったからだ。それでも私が彼女を魔女だと信じる理由が、彼女が作ってくれるケーキやチキンの類が魔法のように美味しいこと。そして誰も知らないような、不思議なお話をたくさん知っているからゆえであった。
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