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「今日はそうね、白雪姫のお話をしてあげようかしら」
「しらゆきひめ?」
「そう。雪のように真っ白で可愛らしいお姫様と魔女と、七人の小人のお話よ。遠い遠い世界では有名な童話として知られているの」
その日のお話も、私を楽しませてくれるのに充分だった。ケーキを食べた後彼女はクッキーを出してきてくれたので、紅茶で乾杯したあと二人でそれをもそもそと食べることにする。食べながら話していても、アーリーンの所作はいつだって綺麗であるから大したものだと思う。町外れの丘の上に一人で住んでいるものの、お屋敷は立派であるし、実はとても高貴な家の出なのかもしれなかった。
こんなに食べたら夕食が入らなくなって、またお義母様に叱られてしまうかも――私がしょんぼりしていると、彼女はある不思議な小瓶をくれて言った。中には、ピンク色の錠剤がたくさん入っている。
「これは、特別な魔法の薬なの。胃袋が大きくなって、たくさん食べられるようになるのよ。お菓子や御飯を食べたあとにこれを飲むようにすればいいわ。そうすれば、晩御飯が食べられなくて叱られるようなこともないし……美味しいものをいっぱい食べられるようになって、ブリアナも幸せでしょう?」
「ほんと!?いいの!?」
「ええ、勿論」
私は早速薬を一粒飲み、いつものようにアーリーンと別れたのだった。それからは毎日何かを食べるたびに薬を飲む日々である。不思議なことに、薬を飲むとたくさん食べたことも忘れたようにおなかがすいてくるので、ケーキをワンホールと大量のクッキーをさらえても問題なくディナーがお腹に入るようになるのだった。
きっとこれも、彼女の魔法の力に違いない。
私は喜んで、ますます彼女の家に通いつめるようになった。時にはこっそり学校をサボって、ほとんど一日中彼女の家で過ごしたこともある。彼女の家にいる間、私はずっと何かを食べていたし、素敵な物語を聞いていた。段々と丘を登るのが辛くなってきた、不思議と体力がなくなってきて困っていると話すと、元気が出るお薬というものもくれたのである。
それを飲むと、学校帰りの道で疲れてしまっても、丘を登るのに息が切れてしまっても立ちどころに治ってしまうのだった。
私は彼女のお菓子と物語、魔法に夢中になったのである。――その結果がどのようなものであるのか、全く気がつくこともなく。
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