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「ブリアナ、最近その……どうしたんだい?」
久しぶりに貸本屋のおじさんのところに行くと、彼はやや戸惑ったように私を見て言ったのだった。
「少し見ない間に、その……」
「うん?どうしたの、レンツさん」
「い、いや……服が窮屈そうだな、と思って」
ああ、やっぱりおじさんにもわかってしまうのか。私は苦笑して、そうなのよと告げた。
「急に成長期が来てしまったみたいなの。ドレスもすぐ新調しなくちゃいけなくなって、困ってるのよね。お義母様にも珍しく心配されちゃったわ。でも大丈夫、私はとっても元気だもの」
「そ、そうかい……」
なんだろう、大丈夫だと言っているのに、おじさんはまるで苦虫でも噛み潰したような顔をしている。
そういえば、最近はおじさんを含め、いろんな人からずっと言われていたあの言葉を聞いていない気がする。三ヶ月くらい前までは、毎日のように“ブリアナは可愛いね”という言葉を聞かされていたというのに。
――まあ、私としてはどうでもいいのだけど。見た目なんかより、人間は中身が大事だもの。……ああ、そうね。学校の成績が落ちてしまっているからなのかもしれないわ。最近、先生の目も、みんなの目もどこかおかしい気がするし。
アーリーンに言えば、学校の勉強を見てもらうこともできるだろうか。あれだけ様々な物語を知り、そらで語れる彼女である。きっとジュニアスクールの勉強を教えるくらい、わけないことであるはずだ。
いつものように息が切れてきたところで薬を飲み、私は丘をゆっくりと登っていく。足が速いのが自慢であったのに、最近はそのタイムも落ちてしまっていた。人前で薬を飲むことができないせいである。学校の成績より、そちらの方が私にとってはショックなことだった。
しかし、何故ここのところ急激に、足が遅くなったり体力がなくなったりしてしまったのだろう。昔は薬なんか飲まなくても走って丘を上れたし、学校に行くのだって全く問題はなかったはずなのに。
「アーリーン、こんにちはー!」
よいしょ、と。小さな屋敷の入口にぐいっと身体をねじ込むようにして私は告げる。
「今日もまた来ちゃったわ。おやつはあるかしら?」
「こんにちはブリアナ。勿論よ。今日はドーナツを焼いたの。すぐに出すから、座って待っていてね」
「やったー!」
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