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「あー、あれ、多分まだ実家だわ」
(よっしゃ!)林は心の中でガッツポーズする。そうでなくちゃ、めかしこんできた意味がない。勢い込んで彼の肩を抱いて、
「じゃ、これから取りに行こう。電話しろよ」
というと、廣木が目をぱちくりさせた。
「嫁さんに?」
(違うって!)
「ばか。お前の親に、だよ。急に行くんだからさ、連絡くらいしとけって」
心が急く。確実に捕まるかどうかが肝心だ。できれば空振りしたくない。林は廣木がスマホを取り出すのももどかしかった。
「あ、かーさん? ちょっとこれから友達連れて寄るんだけど、いい? え? 誰って。結婚式にもきてくれたじゃん。は」
待ちきれなくて廣木のスマホを取り上げて通話を切ってしまった。唇を尖らせる廣木の肩をポンポンと叩いて林はにっこりした。
「いるんだろ。じゃ、早く行こう」
廣木がぽかんと林を見る。居酒屋の店員もその場にいた他の客も、一瞬心を奪われたキレイな満面の笑顔だった。
林が廣木の実家に寄るのは実は初めてだった。長い付き合いだが、部活は別々だったし、遊ぶ時はいつも外だったから。
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