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林は上背もあり整った甘い顔立ちをしているため、周囲の女子社員たちは彼を〈白馬の王子様〉と勘違いしている節があり正直うんざりしている。彼女たちは結局自分のことをお姫様扱いしてもらいたいだけなのだ。そう分かっていても気弱なところがある林はつい期待に応えようと必要以上にカッコつけてしまう。もともと器用で何事も卒なくこなすタイプだからボロが出ない。そうすると女たちはもっとベタベタまつわりついてくる。擦り寄らないでくれ、キンキン声で笑うな。社内には密かに林のファンクラブも存在するらしい。それが恋人は不満らしいが、二人の交際を公にできない以上、彼女の不安は解消のしようがない。悪循環だ。
そんなことを考えていたら、つい、しらけた声が出た。
「……はあ」
それをあわれに感じたのか、
「昔から結婚したいって言うのは俺よりお前の方だったのに、最近は浮いた話さっぱりだよな。嫁さんの友達、紹介してやろうか?」
と廣木が林の顔をのぞきこんできた。
ありがた迷惑である。慌てて首を横に振った時、着信音がして林はスマホを取り出した。電話ではなく通信アプリだった。ブルーライトが目に染みる。
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