昼と夜の間の女

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 女が林の前にある灰皿を、よいしょと運ぼうとしたので目の端から転げ落ちそうになっていた涙が一気に引っ込んだ。 「ちょ……待てよ。まだ吸ってるだろ!」  抗議は自分でもどきりとするほど強い口調になってしまった。 「……オーナーが撤去しろって……うるさいんで」  女のほうもバツが悪いと感じたのかボソボソと早口でそう言い、ほんの少しの躊躇の後、灰皿をそのままにドアの向こうへ引っ込んだ。  女の姿が見えなくなると急に自己嫌悪が押し寄せてきた。(指示されてきたのに俺に追い返されて、可哀想なことしちゃったな)まだだいぶ残っているタバコを灰皿に押し付けて林は会社に戻った。 (俺も世間並みに若い女のことが良くなれば人生楽しくなるんだろうか) ……まあ、それほど悲惨な人生ってわけではないのだが。
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