昼と夜の間の女

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 灰皿のことがあってからも、林はこのコンビニへちょくちょく寄るようになっていた。何となしにあの女の店員が気になるからだ。失恋やら生きづらさのを縁もゆかりもない赤の他人にぶつけてしまったという後ろめたさがある。だからと言って、〈この間はスミマセン〉と声をかけるまでのことでもないと思う。朝寄ると女の姿はなく、通用口に灰皿もなかった。昼食がてら通りかかるとポツンと灰皿が出されている。店内をのぞくとレジに並んだ客の後ろ頭の向こうに少し疲れをにじませた女が立ち働いているのが見えた。じゃあ、と林が帰る頃すっかり暗くなってからいくと女はいない。しばらくの間足繁くコンビニの前を歩き、観察しているうちに、あの女はどうやら昼から夕方までの間働いているのだとわかってきた。  昼と夜の間だけのパートということか。朝は旦那と子供を送り出し、家事を済ませて働きに出る。家族が帰る前に仕事を終え家に戻って夕食を作る。  呆れるほど、ふつーの主婦の生活だ。
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