35人が本棚に入れています
本棚に追加
「四十九日を過ぎると成仏出来なくなる?」
「厳密に四十九日と、時間的な制約があるわけではないよ。キミがアルバイトをしていたコンビニを見てごらん」
そう言って教授が店先を指差した。
稜斗が働いていたコンビニは、一般車両がアーケード街に入れないこともあり、人通りの途絶える夜間は営業をしていない。
照明の消えたコンビニの窓ガラスが、街灯の反射で鏡のようにステージを映していた。
「別に変わったことは無いと思うけど……」
「確かに変わったものは映っていないね」教授が意味ありげに言って、ニヤリと笑った。
「ステージが映っているけど、ここに居る誰一人として窓ガラスに映っていないだろ?」
「あっ!確かに。幽霊って、やっぱり鏡には映らないんだ」
「基本的には映らないね。これが、どう言う結果を引き起こすと思う?」頷きながら教授が尋ねたが、稜斗が首を傾げて、わからないと意思表示をした。
「霊は、自分の望む年齢の姿を取ることが出来るけど、鏡に映るわけでは無いから、自分で自分の姿を見ることは出来ない。いつの間にか、自分の顔を忘れてしまうのさ」
自分の顔を忘れることなど、あるのだろうか?仮に忘れたとして、だから何だと言うのだ?そう考えながら稜斗が沈黙していると、教授が更に話しを続けた。
最初のコメントを投稿しよう!