ハロウィン・ツアー Ⅱ

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「成仏出来ずにオーバーステイしている奴らは、この世に対する未練や怨みと言った念が強すぎて、その念が因果となって現世に結び付いている。 時間と共に楽しかった記憶は忘れて、自分の顔さえ忘れた頃には、自我を失くした因果だけの存在になってしまうんだ。四十九日と言うのは、霊が因果に支配されずに済む、品質保証期間的な区切りだよ」 「でも、ここに居る皆は、因果だけの存在じゃ無いよね?」  ステージ上は宴会の真っ最中で、楽しそうな笑い声に包まれている。全員が、あきらかに自我を持っているし、因果だけの存在と言うなら、笑顔は生まれない筈だ。 「僕も含めて、ここに居るみんなは、ロードに救われたのさ。ロードの刀があるだろ?」そう言って背中に差した日本刀に視線を向けた。 「あの刀でロードは、成仏出来ずにいる霊を縛った、因果を断ち切るんだ」 「───」 「僕はロードに救われる前は、毎晩、大学の校内を徘徊しているだけの幽霊だったし、琴美さんは、青木池に君臨する最強の地縛霊だったんだよ」青木池と言うのは、県内で最怖レベルの心霊スポットである。 「その頃って、教授は自我があったの?」 「勿論、自我なんて欠片も無い状態さ。琴美さんに小嶋、ここに居る全員がロードによって因果から解放されて、自我を取り戻したんだ」
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