序章

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 ドラキュラに魔女、何だかわからないような怪人、妖怪に、ヒーローの着ぐるみを着た者たち。自撮りやステージに向かって光るスマホのフラッシュ……  お祭り騒ぎの喧騒に、煩わしさを感じた稜斗が、その場を離れようとして歩き出したが、直ぐに立ち止まった。  稜斗が一点を見つめていた。  フード付きの黒いローブ姿。  骸骨のマスクを着けているので顔はわからないが、長身なことから死神の仮装をした男なのだろうと思われる。  人混みを掻き分けるようにして、ステージに近づく死神に、稜斗は違和感を感じていた。  稜斗が僅かに口元を歪めた。違和感が嫌な予感へと進化していた。  死神はステージの右端、つまり愛実の正面に向かっていた。  死神の肩に担がれた大鎌。  五十センチ程の刃渡りで、刃の部分は白でペイントされたスポンジのようである。  ………否!  スポンジで出来た刃は、稜斗の見つめる中で過去形に変わっていた。  スポンジの中から銀色に光る、本物の刃が現れたのだ。  稜斗にしては珍しいことだが、動揺した表情に豹変していた。
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