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「愛実!逃げろーー!」
危険を感じた稜斗が、怒鳴りながら人混みに押し入ると、ステージに向かって突き進んだ。
強引に前進する稜斗に、不満げな声を上げる魑魅魍魎のコスプレイヤー達。
だが、その不満げな声は、次第にざわめきと悲鳴に変わって行った。
稜斗の視線の先にある大鎌に気が付く者が現れ、それが伝染するように拡がったのである。
死神とステージ、稜斗とステージの間から、人だかりが消えた。
「ハッピーハロウィン」
死神が叫びながらステージに駆け上がると、愛実に向かって大鎌を振り下ろした。
しかし大鎌は、愛実を庇うようにステージに飛び込んだ稜斗の背中に突き刺さり、胸へと刃先を貫通させていた。
逃げ去る死神の後ろ姿を見送りながら稜斗が崩れ落ちた。
泣き叫ぶように愛実が稜斗の名前を呼んでいた。
稜斗が薄れ行く意識の中で、辺りを見渡した。
無数のスマホが自分に向けられて、動画が撮影されている。
「………やっぱり、クソったれな世の中だ!」
それが稜斗の最後の言葉だった。
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