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真夜中だった。
稜斗は気が付くと、自分が刺されたステージの中央で胡座をかいて座っていた。
何で、こんな所に座っているのだろう?そう思いながら辺りを見渡した。
静寂に包まれたアーケード街。
辺りに人影は見当たらないが、何となく日常のざわめきに似た気配を感じる。
「小僧、気が付いたか」
不意に頭上からドスの効いた声が聞こえたので、反射的に上を見上げた稜斗が驚いて身体を仰け反らした。
二十代程の男が至近距離で、頭上から自分を覗き込むように見つめていた。
「うわっ!あんた誰!?」稜斗が尋ねた。
「俺か?この界隈を取り仕切っていた小嶋だ。もっとも、取り仕切っていたのは、小僧の産まれる前の話しだがな」
少し寂しげに答えた小嶋の全身を、改めて見回した。
玉虫色をしたダブダブのダブルのスーツ。パンチパーマに、ゴールドの極太ネックレスとブレスレット。映画で見たバブル時代のヤクザそのもののファッションだった。
「ヤクザ屋さん?」尋ねながら稜斗が小首を傾げた。
今時、こんな時代錯誤なファッションのヤクザはいないし、わずかに小嶋の身体が透けているように感じたからである。
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