ハロウィン・ツアー Ⅰ

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「ヤクザ屋とは、物怖じしねえ小僧だな。俺は四十の時に足を洗ったが、若頭にまでなったんだぜ」  そう言いながら小嶋が苦笑いを浮かべたが、どう見ても二十代の外見の小嶋が、四十歳でヤクザを引退したと言う話しは、おかしな話しだ。 「まだ若いのに、不憫な子ね」  隣で女の声が聞こえたので、声のした方に視線を向けると、いつの間に現れたのか、若草色の着物を着た若い女が、しゃがみこんで稜斗を見つめていた。 「いや、彼はまだ死んだわけではないでしょう」  更に声が聞こえると、大学生風の眼鏡を掛けた男が着物の女の隣に姿を現した。 「えっ!?今、いきなり宙から出て来たよね!?それに皆、身体が少し透けているけど……」稜斗は、男が虚空から突然現れた瞬間を目撃していた。自分が真夜中のステージにいることも謎だが、三人の存在に頭が混乱していた。 「それは違うな。僕たちは初めからここに居たから、キミが僕たちを認識出来なかっただけさ。目を閉じて深呼吸をしてから、落ち着いて辺りを見渡してごらん」  大学生風の男が答えた。  稜斗は訝しげに思ったが、恐怖感は感じなかった。  パニクった頭で考えても無駄なだけだ。そう判断した稜斗は、素直に目を閉じると深呼吸を繰り返した。 ( そう言えば、俺は死神のコスプレ野郎に刺されなかったか? )  大鎌が自分の胸を貫いたことを思い出していると「そろそろ良いぞ」と、小嶋の声が聞こえた。
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