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だが、このウミガメ・・何か変だぞ! 目が車のヘッドライトのようだ。しかも俺を照らしているではないか。
「お前は誰だ?何者だ!」
こいつは生物ではない!こいつは明らかに工学的に造られたウミガメ型潜水艦のようである。その潜水艦のライトは、俺が壊そうとしていたウインドガラスにメッセージを投光し始めたのである。
「なんだって? “ガラスは壊すな・・牽引してやるから大人しくしていなさい”だって?」
奴は、俺を助けるつもりなんだ? 車内は、まだ浸水はしていないようだし、とりあえずこの場の俺はカメ形潜水艦の指示に従うことにした。
俺の車には、直ぐに牽引ワイヤーが掛けられた。それから暫くの間である、ウミガメ型潜水艦に俺の車の行先を任せることになったのは。
牽引されておよそ10分ほど経過したころだった・・カメ形潜水艦は海藻に覆われた岩盤の手前で停止した。
「こんなところに止めて何をするつもりだろう。そうか・・この岩盤はきっと地上に繋がっているんだ。そこからクレーンで俺の車を釣り上げるつもりなんだ。そうに違いない」
だが俺の想定は見事裏切られた。なんと正面の岩盤が縦・横とも10メートル程に亘って観音扉状に開いたのである。緩やかにそしてダイナミックなその動きはまるでサンダーバードの海底基地そのものである。
そう言えば、俺が名付けたこのカメ形潜水艦こそが、サンダーバード4号と似通っていると言うから人形劇も面白いものである。
基地の中に入ると俺の車はまるで立体駐車場のようなデッキの上に乗せられた。
続いて舞台装置のように海上からせり上がったかと思うと、そのしずくも治まらないと言うのに周りの洗車ブラシが回転を始めた。金属で出来た車は海水を浴びると直ぐに錆が発生するからだろう、何とも繊細な洗車サービス付きのお出迎えとなったのである。
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