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手紙を拾った。
潔いくらいのシンプルな白い封筒、開くと中には飾り気のない白い便箋。
書いてあったのはたった一言。
『はやくさがしだせ』
意味深だ。
めちゃくちゃそそられる。
「鬼ちゃん、またその手紙見てんの?」
大学の学食で便箋をクンクンと嗅いでいると、幼馴染の裕也が話しかけてきた。
「うん、めちゃくちゃいい匂いするし」
「いやいや、カレーの匂いしかしないって」
確かに、今の学食内にはカレーの匂いが充満している。
だが、手紙に顔を近づけると強烈なカレーの匂いを打ち消すほどの甘くかぐわしい匂いが俺の鼻腔を満たすのだ。
「これ、絶対にいい女の匂いだ」
俺が陶酔したように言うと、裕也はちょっと顔を引きつらせてからコップの水を飲み干した。
「なんで女だって、分かるんだよ」
「んー、第六感」
「今まで幽霊すら見たこと無いくせに」
「でも分かる。これは女で、俺を待ってる。絶対に探し出す」
「探し出してどうすんだよ」
「食べる」
「たべ…………。あのさ、鬼ちゃん」
「ん?」
「その手紙の話、俺以外の前ではしない方がいいよ」
「そうか?」
「うん、確実に正気を疑われるから」
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